表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラグナロクの翼 ―あの蒼い空と海の彼方―  作者: Mayu
秘められた力の章
320/451

嵐が去ってまた9

「はい。リック様にも心配されてしまうので、無理はしません」

「ねえ?」


コレットはにっこりして、囁く為に口元へ手を添える。


「今の生活が合わないんだったら、私についてこない?アレックスも、そうしてくれたら喜ぶと思うの。まだ貴女のこと、想ってそうだもの。可愛いお姫様で私の義娘むすめにならない?ね、レティアーナ。いいでしょう?」

「ええっ?」

「ちょっ!母さん、やめてくれっ!!」


レティは驚いた。アルが慌てて駆けつけて二人の間に手を入れ、母をレティから離した。


「恥ずかしいから!」

「冗談よ」


おかしそうにコレットは笑った。


(この母子おやこは全く……)


リックは溜息を噛み殺し、心で呆れの言葉を吐いた。

国王がコレットの横に立った。


「コレット、この者達を知っているのか?」

「アレックスの友人ですわ、兄様。リックとレティアーナです」


間近で見る国王にレティは焦る。慌てて頭を下げた。


「こんにちは!初めまして、王様」

「お初にお目にかかります。お会いできて光栄です、国王陛下」


リックは落ち着いて地面に膝をつき、頭を垂れた。

レティもそうするべきかと思ったが、コレットが両肩に手を置いてくれ、「貴女はそのままで大丈夫よ」と助け舟を出してくれた。


「堅苦しくしなくても良い。面を上げよ。立ってくれ。今回は何やら、チェルシアと甥のアレックスが世話になったようだな。此方から礼を言わせて欲しい。ありがとう」

「勿体なきお言葉でございます」


リックは答え、それから立ち上がった。


(リック様、すごいなぁ……)


国王とも礼儀よく言葉を交わせる姿を見て、レティは感心する。更にまた、リックがレティの中で輝いて映った。


「これからも二人と仲良くしてやってくれ」

「はい。その所存です」


リックの答えに、国王が満足げに頷いた。そして彼の元に一人の兵士がやってきて何やら耳打ちをする。


「コレット、アレックス。折り返しの準備が出来たようだぞ」

「あら、まあ……。早いこと。そうしましたら兄さん」

「うむ。元気でな」

「ええ、兄さんも。お体に気をつけてください。チェルシア、貴女もね」

「はい、叔母様」


コレットは国王とチェルシア、両方と一度ずつ抱き合った


「シア、元気で」

「兄様!便りを書きます」

「ああ、わかったよ。返事は必ず」


チェルシアがアルに抱きつき、アルは背中をポンポンと叩く。そして国王に向き合う。


「陛下、失礼します。体にお気をつけてお過ごしください」

「また来るがよい。用事がなくてもな」

「はい」


いつもの軽い会話をするすると交わすアルとは違う一面。レティは感心した。


(やはりアル様は王子様でいらっしゃいます)


国王から離れ、最後にアルはリック達のところに来た。


「じゃあ、皆元気で」

「アル様も」

「レティアーナ」


アルは一度マントを払い、そしてその端を手に持った。

国王の前で変なことはしないだろうと、リックは油断していた。

レティを人目から隠すマント。前に立つアルのアメシスト色の瞳は誘惑するような、酷く妖艶な輝きを放っている。

素早くレティの頬をアルが包み、屈み込んだ。

唇にアルの親指が撫でながら触れ、そして二人は最も近づいた。藍色の瞳が大きく見開かれる。


「まあ」


コレットがうふふと笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ