嵐が去ってまた2
「ね、ね!どれがいいと思う?」
「あの赤いのっ!」
肩に乗ったユーシュテにレティが話しかける。ユーシュテは店頭に所狭しと並べられた中から、艶のある赤い林檎を指差した。
「美味しそうだね」
「あたしの勘があれは美味しいって言ってるの!絶対よ」
「うん。じゃあ、あれにしよう。すみません。この林檎とオレンジを頂きます」
迷いながら選ぶレティを微笑ましく見ていた気のいい中年の店主が、商品を取りながら言った。
「可愛いお嬢ちゃんが来てくれたからサービスだよ。バナナを一本つけてあげるよ」
「ありがとうございます!」
ぺこりと頭を下げて礼を述べ、紙袋に丁寧に入れられた商品を受け取って清算をした。
「早く食べようー……って、そうじゃなかった!」
フルーツのことで頭をいっぱいにしていたユーシュテだが、行きがけにレティと話していたことを思い出した。
頭を振って食欲を追い払い、再度尋ねる。
「ちょっとレティ!本当に行くわけ?」
「うん」
「どう考えたって危ないわよ」
「もう、大丈夫だよ」
「それ、どういう根拠!?」
「リック様とディノス様もご一緒して貰えるし、それに何だか今は普通にお話しできると思うの。……何と無く、だけど」
へらりとレティは笑った。
(まったくどこまでも無警戒なんだから!)
ユーシュテは心の中でため息をついたが、レティが楽しそうだったので口に出すのはやめておいた。
店から出たら、街路樹に寄りかかってリックとディノスが話していた。
「リック様っ!」
レティの呼び声に気づき、リックが会話を止めて手を上げてくれる。走って彼の元へ向かおうとしたら、突然腕を掴まれた。
「きゃ……?」
そのまま後ろから手が回ってきて、ギュッと抱きしめられた。
「やっと会えた。元気なレティアーナ」
視線を後ろに向けたら、金髪が見えた。聡明な顔立ち。人当たりの良さそうな表情。特長的な美しいアメシスト色の瞳。
「アル様!?」
「俺とデートしない?」
「え!?」
相変わらずマイペースな王子は、レティに囁きかける。ところが。
「くぉらああぁぁっっ!!!」
たまたま人がいなかったので、瞬発力を利用してリックが駆けつけた。一瞬にしてレティの目の前に来て、その背後のアルに拳を突きつける。
ユーシュテが跳んでレティの頭の上に逃げた。
アルはレティから少し離れつつもきちんと手を握って引っ張り、攻撃の余波が当たらないように遠ざける。
「ひゃ!」
意思とは違う動きをさせられ、レティは足元をふらつかせる。アルはきちんと彼女が転ばないように支え、そしてリックの拳を手の平で受け止めた。
ビリビリと攻撃の振動が腕を伝わる。
「誰に手ぇ出してんだ!?」
鬼の形相でリックが凄む。呆れたような顔で、アルは言った。
「危ないじゃないか。レティアーナに当たったらどうするんだよ」
「レティに当てるわけがない。手を放せ」
リックの手がレティの腰に回り、引き寄せられる。いつぞやのように、レティを間に挟んでケンカが始まってしまった。




