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海に旅立ちの歌が響く4

酒場に戻った時、店を襲った男たちは既に居なかった。町長が引き取ったらしい。

ジョアンは姿を見せた義愛娘(むすめ)を抱き締めて、それからリックにお礼を言った。

今日はお店の営業は止めて、好きなだけタダでリックにお酒を振る舞うとジョアンが言い出した。


面白かったのはドアがないのを見たレティが、「おじ様、ドアの修理を後回しにするなんて珍しいですね」なんて言ったことだ。

新調はしたが一日経たずに自分で壊したとは言えず、ジョアンは適当に誤魔化していた。



レティは疲れもあってアルコールの回りが早く、ゆっくり飲んでいたのに二時間もすると寝てしまった。

カウンターに伏せて、肩にはジョアンがかけたブランケットがある。


強いリックとジョアンはレティを起こさないようにと気遣い、離れた席へ移動して向かい合って飲んでいた。


「それにしてもリックさん、自分が賊をやってたっていつから気づいてたんですか?」

「洋服はきつそうだが、肉の(たる)みがないなと初めて見たときに思った。背中も逆三角形をしていたしな」


手の中でグラスのウイスキーを揺らしながら、フッとリックは薄く笑う。


「えれー洞察力ですな。おっしゃる通り、街を離れていた間山賊をしてましてね。山で好き勝手してた青い時代があったんですよ」

「そうか……。だが、現役から離れてあれだけの戦闘力があるなら、レティが海賊に困らされたとき、なぜ自分で助けなかった?」

「そりゃーあれですよ」


ジョアンは頭をボリボリ掻いて、笑った。


「レティの安全第一にで。逆上させて盾にされでもしたら、困るじゃないですか。あの子のためなら、自分が酒を掛けられようが構いやしません。何しろレティはほら、可愛いですから」

「まあ、そうだな……」


リックがグラスの残りを煽り、空になったそれにジョアンがウイスキーを入れた。


「リックさん。リックさんは……」

「俺は――」


言葉の続きを聞いて、ジョアンは頷いた。


「リックさん、あの子を連れていってやってください。外にいた方があの子にとっては良いでしょう。それに、貴方の所でしたら安心して預けられる」

「一度出たら、そうそう戻ってこれないかもしれないぞ」

「構いやしませんよ。娘の父親とは、皆こんな気分になるんでしょうかねぇ?手放すのはひどく寂しいですよ。でも、あの子はあの子の人生を生きて良いんですから」


リックは静かに頷いて、今宵も夜空に輝く月を窓から見つめた。




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