潜入作戦4
「ひえー。ここから良く当てられるね」
感心してアルが言った。
「ディノスは外さない。外したことあるのか?俺が知る限りではないと思う」
「流石に初めは下手だったと思うが、慣れてからはどうだったか。いちいち覚えてない。忘れたな」
「ははっ。意外と大雑把だな、お前」
「覚えてるほど暇してないだけだ。お前がサボった仕事もきっちり俺のところに来てるからな」
笑うリックにディノスは嫌味を込めて冷静に言い、麻酔銃を服の中に隠した。
「そりゃ、すまんすまん」
全然悪びれていない言い方でリックが言った。ディノスはため息をつく。
「反省してるなら、少しは自分の仕事を真面目にやれ」
「何か大変そうだね」
「全くだ」
眉尻を下げて言うアルに、ディノスは頷く。
そして、先に塔の入り口へ行くリックを二人は追いかけた。
カードキーを挿し込み、ドアを開けた。中は床、壁、天井全て石造りだ。
「一階には何もないみたいだね」
「そりゃ、侵入者に容易く入り込める所には無いだろう」
「確かにね」
リックの答えを聞いて、アルは笑った。
「チェルシアなら分かるんじゃないか?」
アルの隣を歩いていたディノスが言う。スピーカーは繋げていたので、アルが尋ねた。
「そうだね。どう?」
『確か、メインの研究室は最上階にあったと思います。器具を置いている部屋や書庫がその下です。今も場所が変わっていなければ、ですが』
チェルシアの声が聞こえる。先頭を行っていたリックが立ち止まる。
「ここから上に上がれるみたいだぞ?」
示した先にはエレベーターがあった。
「これが動いたら気づかれる可能性があるけど、でも階段で行くのは面倒だよね?リック」
「つーか、辿り着くまでに何段登らないといけないんだ?」
「敵のところに着いた頃には、ヘトヘトになりそう。カッコ悪いな」
アルは息を切らせて登場する自分達を想像し、笑いながらエレベータの上ボタンを押した。
流石に研究施設とあって、エレベーターは早く降りてきた。
ピン!高い音がして、エレベーターが開いた。そこに乗り込む。取り敢えず屋上の下、最上階を押した。
「当然だけど、これ」
アルは、各階のボタンの上にあるスピーカーと黒いものを示した。
「カメラか。まあ、万が一利用者が閉じ込められたら困るだろうからな。普通は付いてるな」
リックもカメラを見て言った。
「この映像がどこに繋がってるか知らないけど、見つかってここが止められたらどうする?」
「上を破壊して飛んでくしかないだろう」
「やっぱりそうなるよね。けど、君のあの大きな鳥がエレベータの大きさなんかに合うの?」
「元々風に形なんかない。変えようと思えば、合うように体を変化させることくらいわけない」
「へえー。便利だね」
「アルのだって水なら、形はないだろう?」
「俺はね、まだまだ上手くパートナーシップ組めるところまで行ってないんだよね。城の中に契約者も居ないし、どう稽古つけるかも皆わかんないんだよ。基本は平和だから、実戦もあの時からないし」
「本当は戦いなんてないのが一番だろう」
「だよね」
あははとアルは笑う。その時、不意にリックが上を向いた。
「どうした、リック?」
「何か聞こえるぞ、ディノス」
三人とも上を向いた。エレベータの音以外に、何かが紛れている。リックの目が見開かれた。
「これは、まさか……」




