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海に旅立ちの歌が響く

ザン!青い飛沫が上がる。二人とも勢いで海の中だと思いきや……。

レティを包んでいた球体が浮き袋の代わりをしているのか、波の上をふわふわと漂っていた。


「どういうことだ?」

「へ……?あれ……?」


二人とも地面に手足をつくように、波に膝と手を着く。全然沈まないし濡れもしない。

おまけに、そんな二人を囲むように何かが続々と集まってくる。

波間から顔や体を覗かせているのは、十頭程のイルカ達だった。

彼らは透明金の球体を守るように集まり、そのうちの一頭が頭で押すようにして泳ぎ出した。


「この子たち、どうしてここにいるのかしら?」


レティの呟きに、胡座をかいたリックが首を傾げる。


『君の声が聞こえたんだ。だから助けに来たよ、レティアーナ』

「喋った!?」


耳に聞こえてきた言葉を疑う。


「この子たちが喋りましたよね?リック様」

「俺には聞こえなかったぞ。鳴き声は分かるがな」

「そうなんですか?」


(ええー……。リック様に聞こえなかったなんて)


残念だ。もしかしたら、聞き間違いだったかなとレティは思った。

イルカ達に送られて、すぐに海岸へ着いた。浅瀬まで来て、イルカ達は泳ぎを止めた。


『僕たちはここまでだよ』

「そうなの?」

『これ以上は砂浜へ打ち上げられちゃうから。それと……』


別のイルカが何かを鼻先に引っ掛けて持ってきた。

海とも空とも正反対。そんな燃えるような深紅の大きなロングジャケット。


『これ、君の?君たちのあとに落ちてきたよ』


レティはそっと受け取りながら頭を振る。


「わたしのじゃないの」

『そうなの?』

「でも大切なものなの。ありがとう」

『いいよ、どういたしまして』


リックにはレティの声しか聞こえない。だけど、独り言なんかじゃない。

声の大きさがどうだとかじゃなくて、レティが嬉しそうに話すから。


(イルカと話せるのか?)


微笑ましくレティの背中を見ていた。


「リック様、これを」


差し出されたジャケットをレティから受けとる。


「ああ。ありがとう」


自分の声が通じるか分からないが、リックはお礼を言った。

レティが嬉しそうに笑う。



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