謎めいた力8
「あの街にユースを狙う敵が……」
「可能性はでかいだろうな。急いであの街に行くぞ」
リックの言葉を聞いて、鳳凰がスピードを上げた。街の明かりがぐんぐんと大きく近くなる。
飛んでいることもあって、夜風が強い。煽られて落ちないように、リックはレティをしっかり抱いた。
「スピードが出てるが怖くないか?」
「はい。私よりユースちゃんが怖くて不安だと思うから、大丈夫です」
「強くなったな、レティ」
「リック様がいらっしゃるからです。リック様を想うと、不思議と勇気が沸いてくるんです。まだ頑張れるって思えるんですよ。不思議ですね」
レティはリックの気遣いに感謝して、優しく笑って答えた。
(ユースちゃん、皆で帰ろうね。迎えにいくよ。今度は手を離さないから)
前を見据え、心の中でユーシュテに言葉を送る。
そして目を開けたら、前方に飛んでいく鳥のシルエットが見えた。レティは指差す。二人も気づいていたようで、リックが頷いた。
「リック様、ディノス様!」
「ああ。あれだな、レティ」
「もう少し近づけば、あのカモメさんかどうかわかると思うんですけど……」
「だがユースは元々が小さいから、もしコロポックルになってたら気づかれた途端に撒かれるかもな」
「大丈夫だ。レティ、鳥は見た目カモメだと言ってたな?」
「そうです」
「よし。分身を通じて確認しよう」
鳳凰は一旦前進を止め、羽根を上下させて生み出した風から小さな分身を一体作り出す。
「わあっ!小さい。可愛いですね!」
小さな鳳凰は弧を描いてレティとリックの前を通り過ぎ、そして流星のような速さで飛んで行った。その後に本体の鳳凰も前進を再開させる。
「わざわざ前を飛んでから行くなんて、可愛いって言われたの嬉しかったみたいだな」
レティとリックは顔を見合わせて笑った。
そして先に行った鳳凰がターゲットに追い付き、リックの瞳に魔法陣が現れた。
「リック様、目が……」
「こうするとあの小さいのと視覚が繋がるんだ」
「どうだ、リック?」
ディノスが問いかけ、リックはニヤリと笑う。
「見つけたぞ。カモメの姿だな。それにユーシュテがいる」
そう答えて、真剣な顔つきに戻った。
「ただ、今はコロポックルになってる」
「おや?」
「所長?」
肘掛けに頬杖をついていたカナラスは、目を細める。
「追手かな?」
そして、スクリーンに見えた方向を指差した。
カモメに搭載したカメラは、何か空に小さなものを映している。おまけに、こちらに何かが向かってくる。
「謎の力の彼女の抵抗で、大勢に気づかれてしまったから追手は来てもおかしくないよなぁ……。これは迎撃するしかないな」
カナラスが立ち上がる。自らスクリーンの下のコンピュータの前に行った。
「追手を大きく映して」
「はいっ!」
カメラをコンピュータから操作し、遠くの何かを大きく映す。
「これは……鳥ですか?しかしあんな色のいますかね!?」
「それに大きいよね。こりゃ契約者がいたかもな」
「え!?」
カナラスの言葉に部下の研究員は焦ったが、それを言った本人はのんびりとしている。
「所長ぉー」
「何焦る必要があるのかい?相手は賊だが、こっちも丸腰じゃないだろう。科学の力がある」




