謎めいた力7
「リック様……っ」
「一人でよく頑張った。今度は一緒に行こう」
痺れから腕が動かず、ぎこちなく頭を寄せてきたレティの背中を擦ってリックは言った。
ディノスが鳳凰に乗り、そしてリックもレティを抱えたまま続いた。
鳳凰は三人を乗せて空へ上昇した。
「レティ、どっちの方に行ったか見てたか?相手はどんなやつだ?」
「それが、人じゃないんです……」
「ということは、契約者か?」
リックとディノスが顔を見合わせる。
「リック様、たくさんの動物さんと契約できるものなんですか?」
「相手は複数なのか?」
「あ、はい」
レティは頷いた。そこでリックは教える。
「通常は複数の契約はしない。と言うのは、契約の相手の力を行使するのには自分の精神的な力も必要で、複数の契約をするには負荷が大きいからだ」
「そうなんですかぁ」
「こういう生き方をしていると、色んな相手と戦闘になる。だが、未だに複数の契約を交わした奴とは会ったことがないし、話を聞いたこともない」
「契約者じゃない可能性もあるな」
ディノスの言葉を聞いたリックが疑問を投げ掛ける。
「なら、あの電撃はどうなってるんだ?」
「一体が本物で、複数に見えたのは幻影だとしたら?」
「成る程」
「あの……」
会話の途中で申し訳なさそうに口を挟み、二人の視線がレティに向く。
「郵便……かどうか分からないんですけど、カモメさんって電気で攻撃できるんですか?」
「カモメ!?」
予想外の相手に、リックは思わず聞き返した。
「そうですよ。カモメさんが何羽もいました」
「鳥でもたくさんいるなら、雷鳥じゃないか……」
リックは眉を潜めた。ディノスもお手上げらしい。
「一体何なんだ?」
「あ、そうです。そのカモメさん、人の言葉を話せるんですよ」
「何!?」
「だってリック様。どのカモメさんか分かりませんけど、『ショックを与えるんです』って男の人の声がしたんです」
「リック、俺たちは敵としては契約者や術的な幻影を疑ってかかっていたが、そもそもそうじゃないんじゃないか?」
「どういうことだ?」
リックとレティはディノスを見た。
「その鳥が野生でなく、例えば飼い慣らされた鳥にスピーカーや攻撃の道具を付けたり、もしくは鳥自体が人工的に作られた何かだとしたら」
「だから、船に近づいても悪意の気配がしなかったのか。契約で結ばれた生き物なら、契約者の意思が流れて分かるからな」
納得が行った。そしてだいぶ進んだらしい。リックが顔を上げる。
「微かに声が聞こえるぞ」
「ユースちゃん!?」
レティは夜空を探すものの、全く見えない。ディノスも同じだった。声も良く分からない。
「お前の耳の良さは、レティアーナを連れてきたときで証明済みだからな……」
「リック様も耳が良いんですね。あ……」
その代わりにレティ達はあるものを見つけた。
闇夜に光るキラキラしたもの。陸が近づく。そこの街の家々の光だろう。
街の奥にはそこの国の城と見られる建物と、離れた場所に高い塔が小さく見える。




