謎めいた力6
研究室責任者カナラス指示の元、その場に居た者たちは、ユーシュテ誘拐の様子をスクリーンの映像を通して見ていた。
「コロポックルと一緒に居た女、弱そうなのに意外と抵抗しますね」
「いつまでも力がもつと思えませんが、どうしますか?所長」
『止めさせなさい。ちょっとショックを与えるんです』
ピンマイクで指示を出す。
「そうしたら、気を失わない程度に電気流します」
向こう側では流された電流によって、ユーシュテとレティが苦痛の表情で悲鳴を上げる。二人の手が離れてすぐ、変化は起こった。
スクリーンを金色の光が埋め尽くす。
「し、所長!計器が!!!」
至るところの機械の針が大きく左右にぶれ出した。
画面の光は収まり、代わりに金色の羽根が生えたレティがいる。
「妖精!?いや、契約者?」
「違うな……」
ふむ、と顎に手を当ててカナラスは唸った。
「契約者にしては相方がいない。これはとんだ勘違いをしていたようだ。強力なエネルギーは彼女の方だったのか」
「コロポックルはどうします?」
「とりあえず、今回はコロポックル奪取を完遂させよう。女性と言えども、二人も一気に連れてくるのは無理だろう。持ち上げられない」
「そうすると、次に連れてくるのにガードが固くなりませんか?」
「方法はいくらでもあるさ。連れてこられないなら、あちらに来て頂けばいいんですよ」
「はあ……」
何を考えているのか分からないカナラスに、研究員は戸惑いを見せた。けれど、それ以上は答えが得られそうになかった。
「何事だ?」
走ってきたクルー、リックと一緒に来たディノスが聞きながら出てくる。そして目にしたもの。
「いやあああっ!」
空へ連れ去られそうなユーシュテに近づき、電撃を浴びて怯みながらも飛んで手を伸ばすレティの姿。
「レティっ!」
「ユース!レティアーナ!?」
必死すぎて仲間の駆けつけに気づかないレティは、ユーシュテを見る。
リックは前に立って眼帯を外し、魔法陣を呼び出した。
「ユースちゃん、手を」
「レティ」
二人の手が触れ合う前に、また電撃が放たれる。
「きゃああっっ!」
今までの衝撃が重なり、レティを痺れが支配した。それを意識すると全身に感じるのは早く、ガクンと体が揺れる。
「レティ!」
ユーシュテが叫んだと同時に、金色の光の粒の跡を残しながら落下した。
ディノスが走って、リックの代わりにレティを受け止める。同時に金の光はなくなった。
「レティアーナ、しっかりしろ!」
レティに声を掛け、そして空を見る。止める者もいない大事な人は、闇夜に紛れて見えなくなりそうだった。
鳳凰を召喚したリックが、ディノスとレティの元に来る。
「レティ!」
「リック様、私は大丈夫です……」
そう答えるレティの目から、悔しさに涙が溢れる。
「ごめんなさい、ディノス様。私がちゃんと、ユースちゃんの手を掴んでなかったから……っ!」
「レティアーナのせいじゃない」
ディノスは答え、リックを見た。
「ディノス、行こう。見失う前に追いかけるぞ」
大きすぎて甲板には降りられないので、鳳凰が船縁の横、海面ギリギリに体を寄せた。
「全員ここで待機。戦闘準備を整えておけ。ユーシュテを追いかけて追い付き次第連絡する!」
集まった船員にリックが指示を出し、ディノスに寄りかかっていたレティを抱き上げる。




