謎めいた力3
思い返してみれば最初は力を出してもそのまま平気だったのに、寝る回数や時間が増えてきた。
力の放出の大きさにも寄るようだが、このままではあまり良くないことはリックも感じていた。
ディノスと別れて通路を歩いていたら、レティが少し目を開けた。
「リック様……?」
「眠いか?寝てて良いぞ。ベッドに連れていってやる」
レティがゆっくりと頷き、そのまま再び寝入ってしまった。
場所は変わって、とある王国の科学研究室――。
大きな空の水槽や実験器具の数々、様々な計測器に溢れていた。
「カナラス所長!」
呼び止められて、白衣に眼鏡をかけた黒髪の短髪の男が足を止めた。
「計測器が!今までにない動きをしています」
「どういうことだ?」
何かに反応している針が、左右に大きくぶれている。眉間が潜められる。
「これは何処からの受信だ?」
「南の方……。その先は海の筈ですが」
「ほう。力を持った海の化け物でも出たかな?」
冗談を言いながら、彼は部屋の柱の中にあるエレベーターのボタンを押した。すぐに扉は開き、彼はそれに乗って上へと上がる。
上の階には緑色に光る薄暗い部屋があり、そこを通り抜けて奥のドアから外に出る。
控えていた兵が白衣姿のカナラスを見て一礼した。彼は塔の上、海の見える場所から双眼鏡を掲げた。
「あれは……」
遠くの海に小さく船が見える。カナラスは指で黒縁の眼鏡を押し上げ、白衣に止めていたマイクに向かって話した。
「ここからかなり離れた海上に船があるようだが?そこをはっきり見られるか?」
『船!?そうなんですか!急ぎ準備します!』
研究室からの応答があり、彼はまたその場を離れた。行きと逆を辿り、研究室に戻る。
「ポストシーガル型のロボット、用意できました」
研究員が、自動ドアから入ってきたカナラスに答えた。
「うん。やってくれたまえ」
彼らのいる塔から、一見カモメにしか見えないロボット達が何羽も放たれた。
海の上の空を飛び、船に近づく。
研究室のスクリーンに、船がはっきり見えるようになってきた。見張り台の上に、海賊旗がはためいている。
「おやおや。これは商船かと思いきや、海賊船か……。何かそういう宝でも積んでるのか?」
「先程のような妙なエネルギーの波動は、今は拾えないようです、所長」
「だが、ああいう強いエネルギーなら、名残があっても良いんじゃないかい?」
「確かに……」
「ん?」
スクリーンに映る船の甲板。掃除をしていたり雑談をするクルーの一人に、目を止める。
同じく見ていた研究員も口を開く。
「これはまた……海賊船には不釣り合いな格好をした女ですね。派手というか」
階段を掛け降りていくのは、ほぼ赤に近いポニーテールの髪を揺らし、短いスカートのメイド服を身に付けた姿。
その女は階段を降りきったところで、急に姿を消した。
「!?」
見ていた研究員が固まる。
「は……?消えた!?」
「良く見たまえ」
カナラスは画面を指差した。人形よりも更に小さな姿。甲板をちょろちょろと走っている。
「ほう……。これは珍しい」
眼鏡が光る。カナラスは顎に手を当てて微笑んだ。




