再逢~again~8
「いや、良い女になったと思う」
褒められて、青白い頬が僅かな赤みを見せた。
ちょうど会話に一区切りついたその時、少々乱暴なノックと共にドアが開いた。
「レティ!?」
挨拶もなしの第一声にレティを呼んだのは、目立つ髪色のユリウスだった。
「マスター、静かに!」
その脇から全身を黒く固めた、低い背丈の少年がひょっこり姿を見せた。
リックはカーテンを開け、ユリウスとセリオが顔つきを変えた。
「すごい。レティアーナの声が聞こえるとマスターが言ったのは本当だったんですね」
「耳が良いのも自慢だからな」
セリオに答えて、ユリウスは側まで来た。
「やっと目が覚めたか」
「大丈夫ですか?レティアーナ」
「はい。その節はお世話になりました」
「リック兄を助けたい気持ちは同じだったから、気にするな」
「はい」
何だか前よりも、ユリウスは優しくなった気がする。
(何でかな?一緒の時間を長く過ごしたからかしら?)
相変わらずの鈍感なレティは、検討外れなことを思うのだった。
リックはそんなレティの考えが何となく分かり、気づかれないように笑いを浮かべた。
ユリウスが安堵すると、肩が光った。魔法陣が肩と床に広がる。
「マスター!?」
「俺は何もしてねぇーし!」
焦る彼の肩から、白くて小さなものがポロリと落ちた。
小さな犬に見える狼。そのままベッドに飛び乗って、枕に前足をついた。そしてレティの頬をペロペロと舐める。
「冷たい」
レティがクスクス笑う。
「お前も心配してたのか」
ユリウスは小さな雪狼の頭をグリグリ撫で、クゥンと小さな返事が返ってきた。
「契約者さんの中にいても、外側のことが分かるんですねぇ」
「いつだって契約者を通して、見たり感じたりしてるんだ」
疑問にはリックが答えた。
「隠し事は出来ない感じですね」
「だな」
「俺らは常に一心同体、雪狼はもう一人の俺のようなものだ。お前は俺、俺はお前だよな?」
雪狼が尻尾をフリフリと振って、ユリウスに答えた。
「可愛い」
レティが雪狼を褒めると、レティに背を向けて同じように尻尾を振ってくれた。
それを見ながら思い出す。
『私は貴女、貴女は私』
記憶を辿る世界で出会った、金色に光るもう一人の自分の姿。
(あれは本当にただの心が映した幻影だったのかしら?)
自分にも人と違う何らかの力があることは、レティ自身自覚がある。
その力が初めて出たのは、島の岬で身を投げたとき。
リック達のように力ある生物と契約することに関しては、まだまだ知らないことが多い。
それでも、彼らと自分がどことなく違うことは感覚的に分かる。
誰かに話したことはないのだが、感情の波に従って力が溢れ出るとき、実は半覚醒と言うか意識が半分ぼやっとした状態なのだ。
後で思い返して、所々上手く思い出せなかったりする。
だから、力を意識してコントロール出来ているわけではない。あのもう一人の自分も、どこまでが万能薬の影響なのかが未だに分からない。
(私のこの力って、一体何なんだろう……?)
「レティ?」
上の空になっていたレティを心配して、リックが声をかけてくる。彼の顔を見て、レティは微笑みながら頭を振った。
レティの側にいる者、そして本人が感じている疑問が解かれる日はそう遠くないことを、まだリック達は知る由も無いのだった。
「リック様、点滴終わりました」
「本当だな」
リックは看護師に声をかけて、点滴を終わらせる処置をさせた。
【試練の章】 終わり




