再逢~again~2
食事もそこそこにベッドを出ようとしたらディノスに止められたため、流し込むようにトレーの中身を片付けて医務室に向かった。中にいた船医が扉の音で来訪者に気づく。
「船長、副船長。おはようございます。もう具合はいいので? 」
「おはよう。俺は問題ない。レティは?」
船医は閉まっていたカーテンを開けた。
「まだ眠っています」
点滴に繋がれたレティが静かに横たわっていた。
「悪いのか?」
この船に来て血色が良くなっていたはずの頬は青白く、あまり良いようには見えない。
「この点滴は栄養剤です」
心配をあおらないように、船医が説明をした。
「レティアーナがお前を助けるために取った方法が、かなり過酷だったらしい。連れ添った魔女の話だと、命を糧に作る薬だったようだ」
「何!?寿命を縮めるのか?」
「検査をしましたが、寿命を縮めると言うよりは、普通に生活をするような生命エネルギーが底をつきかけているような感じでした。体力や抵抗力がかなり落ちています」
船医とディノスの話を聞き、リックはレティの額に指先を触れさせた。冷たく低い体温。
「いつ目覚めるかは……」
リックの質問にディノスは頭を振った。
「正直わからんそうだ。恐らく体は生命エネルギーを元に戻すのに、全力を注いでいるはずだ。必ず目覚めるとレティアーナを信じるしかない」
何とも言えず、リックは複雑な想いだった。
誰も何も話さないその沈黙を、また開いたドアが破った。
「ちょっ、マスター!ノックくらいしてから入ってください。女性が寝てるんですよ!」
「あ、そっか」
「まったく……」
セリオから咎められながら入ってきたユリウスは、リックに気がついた。
「リック兄っ!目が覚めたのか?もう大丈夫なのか?」
「俺は平気だ」
太陽のような明るい笑顔でユリウスは言った。子犬のように寄ってくる幼馴染みに、表情を一瞬だけ緩める。
「お前達も助力してくれたんだってな」
「ああ。けど、大半はレティの強い意志と根性が成し遂げたことだよ、リック兄」
「結果、こんなボロボロになったのか……。レティを傷つけないようにと思うんだが、上手くいかんな。力不足か」
珍しく弱気なリックの言葉を聞いて、ユリウスは眉を潜めた。
「リック兄の気持ちは分かる。レティは弱いのにチョロチョロして危なっかしいもんな。目が離せねぇっつーか」
うんうんと何に納得したか分からないが、頷きながら言う。
「けどさー、レティの気持ち、ちゃんと聞いてやったことがあんのか?」
「――気持ち?」
ユリウスの言いたいことがいち早く分かったセリオは俯き加減になり、フードの下で口に弧を描かせた。
「レティは、リック兄に守られるばっかでいたいのかってことだよ。別に戦闘術を身につけたい訳じゃないだろうけど、でもいつもいつもリック兄の背中に隠れていたいわけでもないだろ。俺、あんま上手く言えないけど」
こめかみをポリポリと掻いて、ユリウスは言った。そこでセリオが助言した。




