再逢~again~
翌朝、ユーシュテはディノスと一緒に食事を持ってリックの部屋へ訪れた。
机にトレーを置いたら、その音でリックの目が開く。
「……ここ」
「リチャード!」
「リック」
二人はベッドの側に立った。寝ぼけたグレーの目が、しっかりと二人を捉える。
「気がついたみたいだな」
ディノスは安堵の息をついた。いつもは強気なユーシュテの焦げ茶色の瞳に涙が溜まる。
「良かった。本当に良かった……」
リックが居なくなってレティが傷つかずに済んだことも、レティが外へ出て帰ってきたことも、この船から誰一人欠けなかったことが。
絨毯の上に膝をついて、ユーシュテはベッドの端に突っ伏した。
静かに聞こえる声から泣いていると分かったリックは、布団から手を出してユーシュテの頭に手を置いた。
「泣くな。調子が狂うだろう。こうやって安心させてやるのは、レティにって決めてるんだ」
「そう言ってやるな。ユースは心配してたんだぞ」
「分かってる」
ユーシュテは顔を上げ、リックを睨む。
「起きるなりお礼のひとつも言えないとか、心配して損したわ。……てか、そもそも心配なんかしてないしっ!」
ぷいっと顔を背けて言うものの、相変わらず泣きっぱなしだ。
「悪かったよ。心配かけた」
観念してリックが言い、ディノスも膝をついてユーシュテを抱き寄せた。その腕の中で彼女が言う。
「ディノス!リチャードがムカつく!病み上がりの癖にムカつくっ!」
「分かった分かった」
宥めるのに、ディノスはユーシュテの背中を擦った。そしてユーシュテの緊張の糸が切れて、子どものようにわんわん声を上げて泣き出してしまった。
「うちのをあまり苛めないでやってくれないか?」
「お互い様、だろー」
「そう言うところがムカつくのよ、あんたっ!」
泣くのをやめてユーシュテが振り返り、リックに指を向けた。そしてあることを思い付く。自分で頬を引っ張り、舌を出す。
「こうなったら、あんたのその嫌みな言動をレティに言いつけてやるっ!あたしがリチャードに泣かされたって絶対言う!」
「ちょ、待っ!」
リックが両手をユーシュテに向け、表情を変えて焦り出す。
「頼む!それだけはやめてくれ。――すいませんでした」
「……お前。どんだけレティアーナに弱いんだ」
ディノスは呆れてため息をついた。
「まあ、いい。腹が減っただろう。寝ている間、殆ど口にしてないからな」
ディノスは机からトレーを持ち上げて、リックに渡した。
「色々世話かけたと思ってる。だが、意識が朦朧としてた間のことは、正直あまり記憶がない」
「そうなのか」
先に乾いた喉を潤すために水を含み、リックは言った。
「お前に頼んだことと、あとは……レティが離れたことくらいか」
ディノスは静かに聞いて頷く。ユーシュテが落ち着いてきたので、ソファに連れていって座らせた。
「そのレティは……」
「ユリウス達に助力を求めたらしい。そして彼らが無事に連れ戻してきた」
「ユリウスには借りが出来っぱなしだな。礼は言っておこう。今、レティは寝てるのか?」
「それが……」
ディノスは言葉を濁らせた。リックは眉間を寄せる。




