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そして記憶の波へ2

「ん……?」


起き上がったら、浜辺だった。打ち上げられた、ボロボロで破損の酷い船の底にいたらしい。

空と同じ青い海。見覚えのありすぎる景色だ。


「ここは……島?」


物心ついてから、レティがずっと住んでいた島。


(そういえば、記憶を遡るってサラ様が言ってたわ)


自分を確認したが、体は今のままのようだ。船から出て浜辺を歩いた。

見知った島なのに、どこか雰囲気が違う気がして落ち着かなかった。


(ジョアンおじ様、いるかしら?)


レティは走った。大好きな養父なら、自分の話を聞いて助けてくれるかもしれないと思ったからだ。

階段を上がって街に入る。島の人がいつも通りに行き交う。

第一の違和感がここだ。いつもならレティが姿を見せたら、嫌がり避けるような目付きをしていたと言うのに、それが全くない。

戸惑いながら歩いていたら、挨拶をされた。レティも挨拶を返す。


「こんにちは」

「あ、……こんにちは」


何を話すでもなく、挨拶をした人は去っていった。


(私のこと、見えないわけではないけど知らないみたいだわ)


慣れ親しんだ酒場のあるところに行ってみて驚いた。

そこは空き地と小さな倉庫になっていて、酒場の建物がない。向かいの建物は、そのままだと言うのに。


(どうして……!?ここにおじ様はいらっしゃらないと言うの?)


また走って広場に戻った。そこで、見慣れた後ろ姿を見かけて追いかける。


「待ってください。町長さん!」

「ん?」


背筋を伸ばし、スーツを着た男性が足を止めて振り返る。


「どうしました、お嬢さん?」

「おじ様は――ジョアンおじ様は、どこにいらっしゃるのですか?」

「ジョアン……。懐かしいな。彼は成人して出ていったきり、何年も戻ってきてないよ。音信不通でね。我々も用事があって探したんだが、居場所も掴めていないんだ」

「!!?」


(おじ様がいない?)


信じられない思いだった。


(だって、おじ様は……)


体格のいい養父は、旅立つレティを見送るときに確かに言ったのだ。


『愛してるよ、レティ。俺のところに来てくれてありがとう。リックさんに限ってないとは思うけど、俺はここにいるから。もしも万が一戻ってきたくなったら、その時はいつでも戻っておいで』


(おじ様が断りもなしに約束を破るなんてないわ!だって、郵便のカモメさんでお手紙のやり取りは出来てたもの)


一ヶ月に一度くらいの割合で、ジョアンとレティは手紙を送りあっていたのだ。


(だったらこの島は、私の知る島ではないの?)


「ジョアンに用事があって来たのだったら、すまないことをしてしまったね。お嬢さん」

「いえ……」


(そういえば、町長さんも私をお嬢さんって呼ばなかったのに。ここはどこなの!?)


「もしジョアンが見つかったら、可愛らしいお嬢さんが探していたって伝えておこうかね。それじゃあ失礼するよ」


町長は軽く会釈をして、また歩き出した。


(どうしよう……)


見慣れた土地なのに何かが所々違う。町長とは逆の方向に歩いていく。

そうしてレティはふと思った。


(そう言えば、私、どうしてここに来たんだった……?)


島を出ていた感覚はある。なのに、どうして出ていって、そして何故戻ってきたのかが思い出せない。


(あれ?)


急に世界に一人取り残されたような、孤独な気持ちになった。

そんなとき、ボーッと歩いていたレティの足に何かが勢いよくぶつかった。




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