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叡智の魔女8

『レティ……』


頭の中に、リックの声が響いた気がした。


「!」


レティの両目が一瞬にして、はっきり開かれる。


(リック様……!?)


ベッドに手をついて起き上がり、スプリングが沈んで軋んだため、ユリウスも寝ぼけながら目をうっすら開く。


「どうした?」

「リック様……っ」


レティの体が発光した。完全に目を覚ましたユリウスも起き上がった。


「おい!レティ!?」


(苦しいんですね?リック様。今すぐ、貴方の元へ行けたなら)


祈るように両手を組み合わせた。背中に翼が出てきて、そのまま体を反らせて上を向く。胸の中心が丸く光り、離れたと思ったらそこから光の塊のようなもう一人のレティが出てきた。


「え!?」


そして光のレティは壁をすり抜けて、どこかへ飛んでいってしまった。

同時にここに残った本体のレティは、散らせながら光を失って倒れ込む。


「おいっ!」


慌ててユリウスが抱き止め、ぐったりと意識のない体を揺すった。


(な、何が起きたんだ!?)


ほんの数秒のことで、全く理解ができずに焦るばかりだ。







リックの部屋で集まったクルーがわあわあ言っているとき、急に部屋が金色に光った。


「何だ?」


眩しい光の中、腕をかざした合間からあるものを見たユーシュテが声をあげる。


「レティ!?」


金のレティは、押さえつけられるリックの側に降り立った。


『リック様……』


細い指先がリックの頬に触れる。


『皆ここにいます。一緒に生きましょう?大丈夫ですから』

「う、あっ」


リックの目の色から赤い色が薄れる。グレーになったり赤くなったりを繰り返す。


『愛しています。リック様。心から』


レティは触れた指先から金の光をリックに流す。リックの目から赤い色が消え去った。

咳き込んで深く呼吸をした後に、ぐったりとして大人しくなる。リックがうっすらと目を開くと、金色の光が眩しく感じられた。


「レ、ティ……?」

『きっと助けます』


名残惜しげにリックから指先を離し、レティは消えてしまった。







リックの船でレティが消え、同時にユリウスの元のレティが意識を取り戻した。


「……ん」

「大丈夫か!?」

「ユリウス……様?」


心配そうに覗き込むユリウスに藍色の視線を合わせたら、抱きしめられた。


「良かった……。急に反応がなくなるから、何が起こったのかと思った」

「心配かけてすみません……」

「本当だよ」

「リック様に会いに行っていたんです。苦しんでいたような気がしたから」

「は?」

「大丈夫です。リック様は暫く大丈夫です。きっと堪えてくれます」

「そ、そうか」


レティの話は良く分からなかったが、ユリウスは頷いた。


「私も大丈夫です。ユリウス様たちが居てくれるから」

「ああ。リック兄を必ず助けよう」

「はい。約束です」


ユリウスとレティの小指が絡む。


「寝られっか?」

「はい」


レティが頷いたので、ベッドに下ろして二人でまた目を閉じた。

またレティがフラフラと何処かへ行ってしまう気がして、ユリウスは自然とレティの背中に手を回していた。


(細いな……)


華奢な体に触れてみて、そう思う。

リックの代わりにしっかり守ってやらなければならないと、ユリウスは決意を固めるのだった。




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