天使の鱗片と決意4
レティは混乱した頭の中で、絞り出した方法を使う。
「どうして、私を……追いかけるんですか?」
「ついてきたら教えてやるよ」
上手くかわされてしまった。
「この状況で隙をつこうなんて考えるなよ?無駄だ」
「!」
自分の考えを見透かされ、ショックを受けた。その上恐怖でレティの目尻がじわりと水気を帯びる。
(怖い……。どうしたらいいかわからない)
後ずさりが止まる。踵が軽い気がしたからだ。
「っ!」
岬の先端に来てしまい、もう後に進めなかった。
落ちるのを防ぐため無意識に足を前に出したが、体もそれに従って僅かに前のめりになってしまった。
「ほぉら、捕まえた」
二の腕が温かくなって顔を上げる。ニヤリと笑う男の顔が目の前にあった。
「ゲームオーバーだ」
「やっ……」
レティは顔を背けて目を閉じる。
(怖い!助けて……!ジョアンおじ様……)
脳裏に浮かぶのは、大好きな養父とそれから――。
(リック様!リック様、リック様、リック様……っ)
自分を助けてくれた強い恩人。謎の人。
彼がまた来てくれたなら……。
チャキッ。聞きなれない音に薄く開けたら、確認して驚きのあまり目を見開いてしまった。




