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叡智の魔女6

「じゃーなー。お休み」


ユリウスは部屋の明かりを最低まで下げ、ソファに寝転がった。


「あのーぉ」

「あ?何かあんのか?」


彼のベッドに上半身を起こしたままのレティが、ユリウスを見ている。


「ここ、ユリウス様のお部屋ですし、ベッドもユリウス様のですし……」

「だからって一緒に寝るわけにもいかないだろーが」

「どうしてですか?」


レティは首を傾げた。


「どうしてって言うまでもないだろ」


レティはリックの船のクルーであり、女性であり、彼女ではない。


「やっぱり一緒に寝ませんか?リック様ともそうしていたから、私二人で寝るのに抵抗ありません」


(お前じゃなくて、お、れ、だ、っつーの)


ソファに肘をついて、上半身を起こしたユリウスがため息をついた。


「あのな、リック兄とは付き合ってるんだろ?だからそれでも良いんだよ」

「お付き合いする前から寝てましたよ?」

「!」

「ユリウス様!」


肘が滑って上半身が床に落ちかけ、レティが驚きの声を上げた。手をついてそれを防ぐ。


「何だよ、それ」


(リック兄何考えてんだ?――いや、最初からリック兄はそういう関係を狙ってたから良いのか……)


「ユリウス様?」


上半身をソファに戻してベッドを見たら、まだレティがこちらを見ている。


「いいからもう寝ろ」


このまま起きていたら、お互いに寝るまで気になってしまいそうだ。

そう思って目を閉じたらペタペタと裸足の歩く音がした後に気配が近くに来て、また目を開いた。


「ぶっ」


此方へ誘いに来たレティが目の前にいて、驚いた。


「ユリウス様。ベッドで寝ましょう?疲れがとれないですよ」


眼前に迫ってみて初めて、レティは童顔ながら可憐な顔をしていると気がついた。

そのレティが腕を軽く握ってきて、顔に熱が上る。

ユリウスは即座に起き上がり、レティの腰に手を回して荷物のように持ち上げた。


「きゃっ!」

「あーのぉーなぁーっ!」


ポイッと軽くベッドに投げられる。


両手を腰に当て、ユリウスは上からレティを見下ろす。


「何でわかんねぇんだ」


この遠慮と言うか、変な思いやりのたちの悪さを。

リックが、レティから目を離さないようにくっついて回っている理由が分かった。

危なっかしくて過保護にさせるのだ。過保護に育てられたから、そうなってしまうのか元々なのかは分からないが……。

そして悪気がなくマイペースなものだから、彼女の誘いを聞いてやりたくなるのだ。


「分かったよ。俺がここで寝れば良いんだろ?」


(後から俺がリック兄やセリオから、どんだけ睨まれると思ってるんだ……)


手で片側に寄れと示し、レティが不安げな顔をしながら壁側に体を移動させた。

隣に腰を下ろしてから寝転がり、布団を引き上げた。


「別に怒ってねぇよ」


レティの表情が和らいだ。


「ありがとうございます」

「ん?何の礼だ?」

「何となく。色んなことに対してです……」



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