それぞれの決意
キミのいない世界など
それはもう世界と呼ぶことはできない
けれどそれは
キミにとっても同じだった……
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曇り空がどんよりとした日。レティは甲板の掃除当番のクルーと一緒に、箒掛けをしていた。
「おーい」
上から声がするので全員が視線を上に上げると、見張り台からクルーが手を振っている。
「どうした?」
「遭難者がいるぞ!波に流されてる!」
「え!?」
「二時の方向だ!」
みんなで集まって見てみると、木片に上半身を乗せて誰かが漂っている。
「大変だ!助けるぞ!」
クルーが箒を床に置き、一人が船を停止させるため、他のメンバーは道具を取りに中へ入った。
「レティアーナちゃんは、見失わないように見ていてくれ!」
「わかりました」
皆が戻ってくるまで、波に揺られるその人を見ていた。
(大丈夫かな……?)
箒を握りしめて、生きていて欲しいと願う。きっと助かりたくて木片に掴まったのだろうから。
戻ってきたクルーが小さなボートと浮き輪、ロープを持って戻って来た。
海にボートが投げ込まれ、浮き輪とロープを持った三人がそこに乗り込んで漕ぎ出す。
「お気をつけて」
「大丈夫だ。海とは付き合いが長い。今日は少し荒れてるが、油断しやしないよ」
見送るレティに、クルーは笑顔で答えた。そして彼らは去って行った。
しばらくしてボートは止まり、一人がロープのついた浮き輪を持って海に入る。
遭難者は意識がないのか反応がなく、クルーがその人を抱えて浮き輪を通し、残りのメンバーが海の二人を引っ張った。
(さすが、手際がいいなぁ……)
遭難者をボートに引き上げ、クルーが再び乗り込んでからこちらへ戻って来る。
下に降りてきた見張り当番は、船医を呼びに行った。
船医が出てくる頃、クルーが船に戻ってきて遭難者が甲板の床に仰向けに寝かされた。
ずぶ濡れの男で、酷い目に遭ったのか服もボロボロだった。
「衰弱してるみたいだけど呼吸はしてるから、辛うじて生きてる」
「見つかってよかったですね」
レティは床に膝をついた。
「本当だよ。悪運が強いんだな」
「う……」
男が呻き声を上げ、瞼が動いた。衰弱したこの男が起きるはずもないのに、レティの背中に悪寒が走る。
(あれ……?何だろう)
「こいつ気がついたのか?」
レティの後ろからクルーが覗き込む。
その瞬間だった。男の目がカッと開く。常人なら白いはずの眼球が黒く、瞳が赤い。明らかに何かが違う。
「!」
ブワッと風に煽られたように髪が揺れ、レティの体が金の光に包まれた。翼が出てくる。
(これ、は……)
クルーや出てきた船医、仲間を守るように金の光の柱が立った。
「あ……う、がっ、ガガガ」
左右に首をゴキゴキ鳴らしながら、遭難者だったはずの男が起き上がる。
「こいつは一体、何なんだよ!?」
立ち上がると思いきや、一度床に崩れて四つん這いになり、フラフラと揺れながら立ち上がった。




