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INNOCENT PRINCESS5

飲食が終わり、ディノスが清算を済ませるまで、全員外で待っていた。

レティはリックの側でしゃがみ、スカートの中が見えるのも気にしないで石ころを転がして遊んでいる。

そうかと思ったら、目の前を蝶が飛んでいるのをじっと見始めた。


「ほ?」


蝶がひらひらと飛び、近くに手が差し出された。その手がじっとしていたら、蝶が指先に止まった。

レティの顔がパッと輝いた。


「此方に来てください、レティアーナ。蝶ですよ」


レティは立ち上がって、セリオの手に止まって羽をゆっくり動かす小さな紋黄蝶に顔を近づけて観察した。

そのうち蝶はセリオの指を離れ、羽ばたいたと思ったら今度はレティの鼻に止まった。

大きな藍色の目が真ん中に寄り、そして。


「……っくちゅんっ」


擽ったかったのかくしゃみをして頭を動かしたせいで、蝶を逃がしてしまった。見守っていたメンバーが笑い出す。

セリオがレティの頬を指で擽るように触れた。目が合ったらニコッと笑ってくれる。

その様子を見て、ジーンズのポケットに手を突っ込んだユリウスが腰を曲げ、セリオの背後から覗き込む。


「改めて見たら、本当にガキになったんだな」


ユリウスと目が合った途端、レティの顔から笑顔が消えた。固まっている。


「ちょっと。真顔で見ないでください。怖がってますよ。大体マスターは最初に引かれてるんですから、笑顔笑顔」

「ああん?おかしくもないのに急に笑えるか」

「そう言うところが怖がらせるんですって!」


ユリウスはセリオに睨まれてため息をついた。そして、少し歩いてレティの脇に手を差し入れて持ち上げる。

レティの体と表情が更に固くなった。……ところが。


「ほーら」


高くあげたり下げたりしたら、緊張がとれて顔がきょとんとし出した。


「楽しくないか?」


弱ったなぁという顔のユリウスを見て、レティは初めて表情を緩めた。そしてそれはやがて笑顔に変わる。


「意外とできるじゃないか。子どもの相手」

「へへーん。そりゃ俺だって本気出せば出来るんだぜ?」


きゃっきゃと笑うレティを見て、リックが褒めた。両手を振って喜んでいたのは良いのだが、レティの体に変化が起きた。

パアッと明るくなり、下から上に金の波が走る。


「あ?」


驚いたユリウスが高くあげたまま止まると、レティの背中に小さな翼が出た。


「ユリウス!」


リックは嫌な予感がして慌ててユリウスからレティを取り上げようとしたが、一歩遅かった。

余程楽しくて興奮したのか、レティがピョンとユリウスの手から抜け出した。


「レティを捕まえて!」


ユーシュテも気づいて声を上げるが、初めてレティの力を見たユリウスはぽかんとしているだけだ。


「きゃはっ」


その場でくるりと一回転して、レティはピューンと飛んで行ってしまった。


「あーーっっ!」

「捕まえるぞ!」


ディノスが店から出たら外で待っていたメンバーがぎゃあぎゃあと騒いでいたが、ふと目線の先に金色の翼で飛んでいくものを見つけて何となく状況を悟った。



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