INNOCENT PRINCESS3
「この顔。まさか……」
ユリウスが驚く。ユーシュテは頷いた。
「そのまさかよ」
「あのボケ女の子どもか!!」
セリオはカクっと頭を揺らした後、額に手を当てた。
「マスター。貴方って人は……」
「あんた……人の話聞いてないでしょ。リチャードの、誰の子でもないって言ったでしょ」
「リック兄の前の男との子どもか!」
「想像力豊かね。」
「マスター、この子はレティアーナ本人ですよ」
「はあああああ!?」
大きな声に驚き、レティがびくっと体を揺らす。眉を寄せてプイッとセリオ達に背を向けてしまった。
ユリウスたちも含め、休憩に近くのカフェで涼む。
「これ……。これの」
リックの膝に座ったレティがピエロから買ったうさぎの風船を振り、見て見てとリックの腕に押しつける。
「可愛いなぁ?」
頭を撫でながら同意すれば、レティがリックを見上げて頬を染めて頷く。
「体が縮んでもやっぱり女か。リチャードが一番良いみたいね」
ユーシュテはふぅーと息をついて言った。セリオは隣に座るレティを見て、顎に手を添えて真面目な顔をする。
「でも今の姿からすれば、一番釣り合うのは僕ですね。僕のこの姿なら人間で言う推定十歳くらいでしょうから、子どもの彼女と並んでもおかしくない。勝負一歩リードです」
「あんた……。何言ってんの。うちの子に変な目向けないでくれる?お巡りさん、いませんかー?ここにいる変態ガキを逮捕してくださーい」
「横取りされたくなければきちんと守ってれば良いんですよ」
「守るさ。失って困るものは全力でな」
リックは静かに答えた。
(俺はまだまだだ……)
最初は完全に守れると思っていた。それなのに、レティを幾度となく危険な目に遭わせている。
レティは人形ではない。だから彼女なりに何かを考えて行動に移し、それが意外と想定外でリックの守備範囲から外れることがある。
ディノスと違い、例え護身用でも彼女に武器を持たせていないからには、リックが剣となり盾とならなければならないのだから。
(もっと守る範囲を広げないとな)
外に広がる空を見上げて、改めて決意を固めるのだった。
その時、ウエイトレスがトレーを両手に持って注文の品を運んできた。
今まで白目でよだれを流してテーブルに倒れていたユリウスが、がばっと勢いよく起き上がった。
昼食がまだで厨房から漂う食欲をそそる匂いに焦らされていた彼は、大盛りのピラフをすぐにがっつき始める。
そして、他の品を置いているウエイトレスの格好を見て、目を見開いた。
「何だ、その格好は!スカッ、スカートが短いっ!」
「えっ?」
ウエイトレスが困っておろおろとする。
「しかしあれは制服だぞ」
ディノスがカプチーノを飲みながら言うが、ユリウスはスプーンを握ったまま振り回す。
「この店はそういう色気で客引きしてんのか!」
「はぁ。マスターは意外と古風なんですから」
「ホントうるっさいわねぇ」
ユーシュテは指で耳を塞ぐ。
「黙れ、エロ女!」




