INNOCENT PRINCESS
様々な店に入り、下着や靴、洋服を買いそろえた。
「いきなり平和だな」
「確かに……」
リックの呟きにディノスが頷く。二人ともそれぞれ紙袋を持って路地の端に立っている。
彼らの間で水玉模様の白いワンピースを着たレティが、与えられた棒付キャンディーを口に入れてモゴモゴしている。
ユーシュテはお手洗いで離れており、その間レティを見ておくように言われていた。
少し前の緊迫感が嘘のような雰囲気だ。
「お待たせ。……って」
戻ってきたユーシュテが腕を組んで二人を睨む。
「あたしが離れる前に何て言ったか覚えてる?」
「ここで待っとけだろ?」
「そうよ、リチャード。そしてレティを見とくように言ったと思うけど」
「大人しくしてたぞ、レティは」
「……居ないんだけど。」
二人とも間を見たら、いるはずの姿がない。目が点になった。
「二人もついてて何やってんのよ!」
ユーシュテが怒り、三人は走り出した。
「いつの間に居なくなったんだ!?」
「子どもは何にでも興味持っちゃうから目を離したらダメなのよ!」
「とにかく探すぞ、ユース!」
一番広い通りに出て、三人それぞれ視線を巡らせる。ユーシュテが人差し指を上げた。
「いたー!」
小太鼓を先頭に、トランペットやハーモニカを吹きながら行進するピエロの後ろを、小さな後ろ姿がトコトコついていっている。
「あのピエロはそう言えばさっき俺達の前を通ったな」
「その時からついていってたのか……。恐るべし、レティ」
ピエロは通りの中心でお互いに背を向けて輪になり、足を上げて躍りながら曲の最終に入って演奏した。
レティはキャンディーを手に持ったまま、体を上下に揺らせて喜んでいる。
無邪気なレティの所へ行き、その横にリックはしゃがむ。
「楽しいなぁ?」
頭を撫でたら、相変わらず体を揺すったままニコッと笑ってリックを見てくれた。
そして小さな口を開けた。そこから飛び出すのは、子どもっぽい声でありながら伸びやかに広がる歌。
ピエロが演奏する曲を覚えてしまったらしい。
元々子ども連れはピエロの側にいたが、驚いた人々が続々と集まってくる。
(どんな姿になってもやっぱりレティだな)
リックは見守りながら思った。
レティの歌も交えてピエロがより一層楽しそうに踊り出す。曲が終わったら、大勢の拍手や口笛に包まれた。
「上手だったぞ、レティ」
リックはレティを抱き上げて、くるりと一回転した。楽しいのか、声を上げてレティが笑った。




