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メロメロBaby Princess7

「外傷は殆ど無い。これは恐らく何らかの呪いだと思った方が……」


レティの症状を診た船医が言う。ユーシュテは医者の顔を横から見ながら問う。


「治るの?」

「医学で対処できるものと、そうでないものがある。契約者が関わっているとすれば、今回は薬の力では何ともならないかもしれない」

「そんな……」

「リックが帰ってくるのを待つしかないな。有益な情報が聞き出せていれば良いが……」


ディノスが眉間を険しくしたとき、レティが呻いた。


「う……」


指先と瞼がピクリと動く。


「レティ!」

「お嬢ちゃん、しっかり!」


ユーシュテやジャンの呼びかけにもレティは目を開けず、苦しそうな顔をする。赤黒いオーラが体を包み、その後に金の光も僅かに出る。

二つのオーラが交互に出て、そしてレティの目が開かれた。


「……っ!あ、ああ……!あ!」


指先に力が入る。手を握りしめた。


「ちょ、何……!?」


ユーシュテは目を点にした。レティの服が段々と緩くなっていく。十秒程で異変は止まった。


「レティ!」


その時ちょうど、リックが鳳凰から降りて甲板に着地した。走ってレティの元に駆け寄る。


「レティは!?」

「そ、それが……」


座り込んでいたユーシュテが、リックを見上げる。ディノスも船医もクルーも、驚きの表情で動かない。


「……うにゃ?」


舌っ足らずな声が聞こえ、リックはディノス達の後ろから覗き込む。


「は?」


リックも固まった。

全員の視線の中心には、三、四歳くらいの子どもがいたのだ。

アプリコットブラウンの癖毛、藍色の瞳。

体が縮んだせいで脱げた服を引っ張って遊ぶのは、間違いなくレティだ。

つねっても、リックの頬に痛みはきちんとある。これは夢などではない証拠。

どうすれば良いのかと頭を抱えたリックに、ディノスが問う。


「契約者はどうした?」

「自滅した。影響を取り除く方法を聞き出す前に。生命力を狂わせる呪いとは言っていたが、まさかそんな……子どもになるなんて」

「体が縮む前、邪眼の力と自分の力の両方が出てたみたいよ」

「そう言えば……」


リックは今までのレティの様子を思い出した。

最初に岬からの飛び降りから始まり、黒船に拐われたとき、リックとアルの戦い、植物に洗脳されたとき。

全て自分の身に危険が迫ったときや、感情が高ぶったときに力が出ている。

何かを攻撃したところは見たことがない。代わりに。


「もしかしてレティのは……自分の身を守る力なのか?」


意識して使っているようではないのでいつも出るわけではないが、極限までのピンチに追い詰められたら発動しているような気がする。


「どちらにしろ契約者がいなくなったなら、影響は残るにしてもいずれは薄れてなくなるだろう。自分で呪いを食い止められたなら、それで良いじゃないか」

「このままじゃ全然良くないぞ」


リックは手を拳にして震わせた。


「ここからまた成長するとしたら、レティが大人になるのっていつ?」


リックの考えがわかったらしいユーシュテが、しゃがんだ膝に頬杖をついて言った。



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