メロメロBaby Princess4
「リック!」
リックが甲板に出た時、近くにいて鐘を聞いたらしいディノスとユーシュテが駆け上がってきた。
同じ頃に見張り台からのクルーも降りて、厨房からジャンが出てくる。
「敵だな!?」
「ああ」
ディノスに頷いて、閉めたドアを見る。矢が数本刺さっていた。
生憎街へ出たクルーが多く、残っているメンバーがあまりにも少ない。
「姿が見えないのが厄介だな。ユースは中に……」
元々戦闘員ではないユーシュテの背中を押して船内に入るように促そうとした時、突然甲板中に開かれた目が浮かび上がって埋め尽くした。
「何これ、気持ち悪っ!!」
ユーシュテが腕を寄せ、鳥肌を立てて体を震わせる。
大きな目玉がギョロギョロと動く。確かに吐き気を催しそうな雰囲気だ。
ディノスが銃を取り出し、目玉の一つを撃つ。攻撃された目はゆらゆら揺れてスッと消えた。それでも残りが多すぎる。
「これ、百目ですかい?」
「百目?」
ジャンの言葉をディノスが聞き返す。
「身体中に目を付けた化け物ですよ」
「いや、これは違う」
リックは否定をした。
「百目の目は全て本物だ。攻撃すれば傷つく。だが、これは……」
床に膝をついて調べれば、ディノスが放った弾痕が残っているだけ。
「一種のまやかし……幻術のようなものだ。これは恐らく『邪眼』だな。契約者の仕業なのは間違いない」
リックは船を見渡した。
「この眼の中に術者と通じている本物は一つ。あとは偽物だ。叩くには」
「契約者を押さえるか、本物を見つけるしかないってことか?」
「その通りだ、ディノス」
「けど、この船中についた目から本物を探し出すって無理よ、リチャード!どれだけあると思ってるの!?」
ユーシュテが手を広げて反論する。
「だが契約者は離れたところから見ているはずだ。なら船を叩くしかない。本物は偽物と違う何かがあるはずだ。俺が上から見る」
リックは眼帯を外し、魔法陣を呼び出した。
レティはドアの向こうで会話を聞いていた。背伸びをして窓から甲板を覗く。
何処を見ているのかわからない、もしくは全てに見られていると思いそうな目玉の数に、おぞましさを感じた。
(ここからでも分かれば……)
リックの魔法陣が緑色に光を放ったとき、彼の背後にある目が瞬きをした。そして瞳が赤く光る。
「!」
ディノス達は周りを必死に見回しているが気づいていない。
(リック様!)
出るなと言われることも忘れ、レティはドアを開けた。
リックが驚いてこちらを見る。
(ダメ、ダメ……。危ない!)
レティは手を伸ばして走った。感情の高ぶりに合わせ、下から上に金の波が走る。
「やめてぇっ!」
寸でのところで邪眼とリックの間に滑り込み、体の向きを変えた彼の目にレティの後姿が映る。
レティの正面の邪眼が赤黒い光を放ち、胸を貫いた。
「あ……っ!」
当たった衝撃に、透ける金の羽根が揺れた。華奢な背中が反り、レティの体が一瞬赤い光に包まれる。
リックが目を見開いて固まった。




