メロメロBaby Princess
「……」
リック、ディノス、ユーシュテが囲み、一点を見つめている。
「ふむ。これは……」
「夢だ!」
顎に手を当て、ディノスが言いかけた言葉をリックが遮った。
「ユーシュテ、ちょっと俺をつねってくれ」
ユーシュテはリックの頬を思いきりつねる。
「いてててっ!」
リックが痛さに顔を歪め、頬を押さえた。
「リック、夢じゃないようだな」
「どーすりゃいいんだぁああっっ!」
ディノスが冷静に言い、リックは両手で頭を抱えた。
事の始まりは数時間前に遡る。
ユリウス達との出会いから半月。
彼らとは別れて、レティ達はまた新たな土地へと着いていた。
レティは鼻歌を歌いながら、壁に寄りかかっている。壁に背を付けたり離したり。ポンポンと一定のリズムを刻んでいる。
紺色のワンピースの裾がレティの動きに合わせ、ふわふわと踊っていた。
ここは古本屋で、中にリックがいる。
小さな店の中のレジが混雑していたので、彼が出てくるまで外で待っているのだ。
その時、レティの前を紙袋に物を山盛り詰めた青年が通り、そして躓いた。
「わぁーっとぉ!!」
転ぶのは避けられたものの、前のめりになって数歩進んだせいで中身が道にぶちまけられた。
「大変!」
レティは店から離れ、道をコロコロと転がるレモンや林檎を腕に集め始めた。
「すみません」
気づいた青年が申し訳なさそうに言い、レティはにっこりとした。
「大丈夫ですか?お手伝いしますよ」
屈んで拾っては腕に乗せ、道を見回してまた拾うと繰り返していた。そして突如。
ズンッ!背後の重い音に驚き、レティが振り返る。青年の姿が茶色いものに遮られ、舞い上がった土煙で見えなくなっていた。
風が収まってから、目を開ける。
ゴツゴツとした岩のような物が、青年の自由を奪っている。
空いていた片手の甲を額につけ、上を向いた。逆光で姿がよく見えないが、真上の空にある太陽の光に反射して何かが光る。
更に、ドンッと近くから音がして、何かが地面に転がり出た。思わずそちらに目を向ける。
「何やってんだ、テメェは……」
怒りを含んだ低い声。転がったのはこれまた一人の男で、俯せになって晒された背中にブーツを履いた片足が乗る。
「俺の女に何か用かよ……?」
眉を吊り上げて腕を組んで表情を歪ませ、歯を剥き出すのは太陽色の髪の。
「ユリウス様!?」
レティが名を呼ぶと同時に、上から道にもう一人が飛び降りた。
「僕お気に入りのお姫様の親切心を利用しようだなんて、百万年早いんですけど?」
「セリオくん!!」
「久しぶりですね、レティアーナ。騙されちゃダメですよ」
可愛らしい顔でセリオはにっこりした。レティは彼の言葉を聞いて驚く。
「騙す?」
「……どこまでもボケボケしやがって。っとにお前は目が離せねーな!」
ユリウスは逃げないように踏みつけていた相手の襟と腕を掴み、引っ張り起こす。
「こいつが何持ってるか言ってみな」
「カメラ……ですか?」
ユリウスから逃げ出そうともがく男は、首からカメラを下げていた。
「そうだよ。お前、この二人に嵌められて盗撮されてたぞ」
「え?」




