妖艶な悪魔の仕返し5
「ふふっ」
レティはセリオの肩に手で掬ったお湯をかけてあげながら、微笑んでいる。
セリオは少し仕返しをしてやりたくなり、体を少し捻ってレティの肩に手をついた。
「知ってますか?」
「何を?」
「女性の胸が大きくなる方法の一つに、マッサージ……つまり揉むという方法があるという巷の噂です」
「へぇー。そーなの?」
「女性の体とは不思議なものですね」
そう言いながら、セリオは手のひらをレティの胸に押し付けた。
「それで成長するなら見てみたくないですか?」
(そういうのに興味がある年頃なのかなぁ?)
呑気に考えているレティの胸が、小さな手にぷにぷにと揉まれる。
その時、入り口が開いた。
「レティ、入るわよー」
ユーシュテが入ってきて、そして浴槽のやり取りを見て固まった。
「なっ……」
「あ、ユースちゃん」
にこりとしたレティと反対に、ユーシュテがわなわなと体を震わせた。
「このっ……くそエロガキ――ッッ!!!」
洗面器が此方に向かって飛んできて、セリオはレティに抱きついてかわした。
「まったく……。あんたも止めなさいよね」
湯船に入ってきたユーシュテが言う。
「だってぇ。普通の姉弟もあんな感じなのかなって」
「んなわけないでしょっ!」
目を尖らせて突っ込みを入れるユーシュテに、セリオがしれっと言う。
「僕は成長しきったエロ胸には興味がありません。レティアーナのだから良いんです。成長を見てみたいと思っただけで、やましくありません」
「十分やましいわ!つーか、目ぇ潰すわよ、このガキ!」
「やめてぇ。ユースちゃん、セリオくんはそういうお年頃なんだよ。小さいし。怒らないであげてー」
レティがセリオをギュッと抱きしめて、セリオもレティに身を寄せる。
(このガキ……。たち悪そうだわ)
「レティアーナ、あの人怖いです」
「大丈夫だよ。ユースちゃん優しいよ?」
「ガキだからって調子乗ってるとリチャードに制裁食らうわよ」
ユーシュテは表情を歪め、吐き捨てるように言った。
「この船の名高き海の戦士は、子どもにも嫉妬するような幼い精神年齢の持ち主なんですか?まさかそんなわけないですよね?」
(腹黒っっ!)
「そんなことないよ。リック様はとっても優しいんだよー」
元々鈍いレティは、セリオの隠れるように浮かべる笑いや棘のある言葉には、全く気がついていない。
ユーシュテは膝の上に頬杖をつき、ため息を吐き出した。
「阿呆くさ……」
白い目で二人のやり取りを見つめながら、トラブルにならなければいいと願うばかりだった。




