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見慣れぬものにはご用心3

「質問してるのは俺。話反らすな?何でお前みたいに、ボケっとしたちんちくりんなのがあの船にいたかって聞いてんだ」

「細かく話せば長くなってしまうんですが……」

「いや。そしたら手短に話せ」

「はい。リック様があの船にお誘いして下さったので、ご好意に甘えさせて頂いたんです」

「えーとな……。手短って言っても、勧誘の理由をもう少しつけてくんねぇか?」

「私の歌を気に入って下さったからです」

「ほぉ……」


片方の眉を上げ、黒い目がレティをじっと見る。


「それだけなはずがあるかぁっっ!嘘こけ!」


大きな声を出されて、レティは目を閉じて肩を竦めた。


「他に何かあんだろーがよ」

「……あとは、元々いた島で私が住人の方々にあまり良く思われていなかったので、優しさで島を出るきっかけにしてくれたというのもあるかもしれません……」


少し考えて答える。辛い日々を思い出して、レティは少し表情を暗くした。

それが心を刺したのか、相手の語調が少し和らいだ。


「いや、そう言うことじゃなくて……」


男が頭をガシガシと掻いた。


「戦闘能力的に何かあるんだろってことだよ」


その問いに、頭を振って否定をした。


「私、戦ったりとかできないんです。その代わりといえるか分かりませんが、お掃除とかお洗濯とか日常のお手伝いをさせていただいてます」

「はあ?嘘だろ!?海賊船にいながら海賊じゃねぇってのか?」

「いえ。海賊船に自分から乗り込んだからには、どうやら海賊になるそうです」


空に向けて人差し指を立て、大真面目に言えば。


「ハンッ。バカ言え。そんなの海賊になるかよ。お前、海をなめてんのか?」


腕組をした彼に鼻で笑われた。


「客船や遊びじゃねぇんだよ。船を沈める気か。本当に戦えねぇってなら船を降りろ」


二の腕を掴まれて、有無を言わさないような強い口調で睨まれ、レティは目を閉じて怯む。

自分でも少し前に抱えていた不安な脆いところを突かれ、心の揺れが開いた瞳に現れる。

そんなとき、大好きな声が甦った。



『 側にいてくれ。呆れるくらい愛してやる。俺だって嫉妬はする。だから、レティをきつく締めて、逃がしてやれないかもしれない。それでも良いなら、俺の隣にいろ』

『俺はそれでもレティがいいんだ。一緒にいたいんだ』

『 出ていかれると思っただけで、目の前が真っ暗になったように感じた。どこにも行くな、レティ。じゃないと、俺が狂う』

『 普段はレティが側にいてくれれば、強くいられるから大丈夫だ』



耳の鼓膜にすら恋をさせる、熱く痺れるような低い声。不安な心を助け、支えてくれる声。


(私はリック様とお約束した。リック様がお望みな限り、勝手に離れたりしないと)


レティの目の中に秘められた光が変わる。


(例え言うことを聞かないからと酷い目に遭わされてしまったとしても、リック様に対して不誠実なことだけはしてはいけないわ)


「いいえ、船は降りられません」


少し驚いたようで、黒い目が大きく開いた。



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