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眠りの国の歌姫さん3

「一緒に入るか否かなんて、今更だろう?レティ」

「そ、そんなぁ……」


腰にタオルを巻き付けて、体を洗う用にもう一枚タオルをもって振り返れば、レティが眉を下げて困った顔をしていた。

サイズも肩幅も合わないリックのシャツを着て、少し上げた袖口から見える小さな手が握りしめられている。

そこでレティの側まで歩き、裾を掴んで上に引き上げた。緩いシャツが華奢な体から一気に抜けた。


「ひきゃーっ!」


胸を隠す下着をつけていなかったので、変な悲鳴を上げてレティがシャツを引っ張り、体を隠した。


「ほら、下も脱いで」

「あ、あっち向いて下さい!見ないで下さいっ!」


片手でリックの胸を押した。


「はいはい、分かったから」


リックが背を向けたのを見て、更にレティも背を向けてゆっくり下着を取った。


「脱ぎました」


棚の洋服に下着を挟み込みシャンプーとトリートメント、ボディソープのポーチを抱えた。

そして相変わらずシャツで前を隠し、終わりを告げる。リックはバスタオルを取ってレティに放った。

レティがそれを体に巻き付けたのを確認し、浴場のドアを先に開けて歩いてきたレティを捕まえ、抱え上げる。


「こんな所までですか!?」

「滑ったりしたら危ないだろう?」


広い床を少し歩いて浴槽の側にレティを降ろした。

洗面器で先にレティへお湯を掛け、それから自分もお湯を被る。

今度は浴槽に先にリックが入り、レティに手を差し出して湯船に招き入れた。

今日は透明緑になっている液体に体を沈め、緊張が解れたのかレティが息を吐いた。


「ふぅ……」


そして同じくリラックスするリックを見て、視線がぶつかった。


「!」


華奢な体が縮こまり、少しずつ距離をとる。動き方があまりにぎこちなくて、リックは吹き出した。


「また恥ずかしいのか?」

「だってぇ……」


湯気に見え隠れする赤い顔。それはお湯で温められただけではない。


「流石にこのタイミングで悪戯はしないぞ?」


そこまで飢えた盛んな若僧ではないし、第一傷を負ったレティの体がまだ癒えていないと思って言えば。


「そうじゃないんですっ!」


必死な声が室内によく響いた。


(近くに来たら、リック様の体が見えてしまうから)


この船の中ではディノスと共に細身な方なのに、逞しさや強さを強調するように鍛えられた体にドキドキしてしまうから。

視線を反らしてため息をついたら、チャプッと揺れる水の音がした。


「っ!」


レティの考えに予想がついたリックがいつの間にか側に来ていた。驚いて息を飲む。


「そうじゃないって、そしたら何が?」




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