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眠りの国の歌姫さん2

「大丈夫か!?」

「何とか……」

「やっぱり無理するな」


膝をついたリックが優しく声をかける。

自分の衣服をソファの背に掛け、再度クローゼットに行った。

そして自分のシャツを持ってきてレティの頭に通す。


「立てるか?」


レティが袖に手を通してから背中に手を回し、立ち上がる支えになった。


「ありがとうございます。もう……、大丈夫です」


(レティの大丈夫は、大体アテになんないんだよな……)


恐る恐るといった感じで下着を履き、夜着を手に抱える。

その後歩き始めたが、酷く緩慢で覚束ない。

ゆったり過ぎて、ここから近い自分の部屋にたどり着くのすらいつになるのかといった感じだ。レティはため息をついた。


(足の間にまだ何か挟まってるような気がする……)


リックはじっと見ていたが、やっと入り口近くまで歩いたレティを追った。

借りたシャツ一枚のみから出る白い太股を晒し、通路をてろてろと歩かれる所を誰かに見られてはたまったものではない。

引き止めるように、後ろから華奢な体を抱きしめた。


「レティ、もうタイムオーバーだ」

「タイム……?きゃっ!」


肩越しにリックを見る前に、足が床から離れた。横抱きにすると下着がシャツから見えてしまうため、リックは腕に座らせるようにレティを抱えた。

片腕にレティを抱え、レティの持っていた分と自分の着替えを手に乗せる。

そのまま部屋を出たら、レティがしがみつきながらも小さく言う。


「あの、リック様っ!降ろしてください」

「ダーメーだ」


有無を言わせぬようにきっぱり言えば、子犬の鳴き声のような声を出してレティが諦めた。


「レティはもっと頼っていいんだぞ」

「は、はい……」


階段を上がってすぐ近く、レティの部屋を開けた。


「ゆっくりでいいから準備しな?」


一旦降ろし、レティの夜着を返した。

ベッドに腰を掛けて、やはりてろてろとした動きで風呂の用意をするレティを見守る。

リックをチラッと見て、自分で出ていこうと一歩を踏み出したところで、腕を掴んで引き止める。


「こらっ」

「あっ!」


(バレバレで逃げられるわけないのに、どうしてそこで挑戦するんだ……)


再びレティを素早く抱え上げたら、また子犬のような声を出した。


「だって恥ずかしいんです」

「恥ずかしいものだらけだな、レティは」


クックッと笑いながら、さっさと歩いて大浴場の扉を開けた。

使用中にするためにプレートをひっくり返し、中に入る。

レティを降ろし、荷物を棚に置いてやった。


「リック様、ありが……」


連れてきてくれたお礼を言おうとしたら、リックがシャツを脱いだ。


「え!?」

「先に入ってるから、レティは転ばないようにゆっくり来な」

「え、えと、あの、リック様っ!」


反応は予想していたので何を言いたいかすぐに悟り、可笑しくて吹き出してしまう。



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