眠りの国の歌姫さん
眠りが浅くなり、肌寒くて無意識に体を縮こまらせた。
誰かが布団を引き上げてくれ、肩を抱く。そしてさらさらとゆっくり髪をすいてくれる。
「……」
うっすら目を開けると、髪から手が離れて頬をくすぐられた。
「起こしたか?」
「……ックさ……ま?」
全く疲れが取れてなくて、目を開けるのが辛い。
それでもむにむにと目を擦り、二つのラピスラズリをパッチリ見せた。
「辛くないか?」
どうしてそんなことを聞かれるのかが分からずに、緩く頭を振った。
すごく温かくてよく見てみれば、リックは上半身何も身に着けていない。
「……」
そう言えば、肌に布団が直接触れる感覚がすると肘をついて少し布団から出てみて、自分の格好に驚いた。
「ひゃふっ」
俯せに倒れ、体を隠す。そして漸く昨夜の記憶を取り戻した。
自らの恥態に恥ずかしくて顔が真っ赤になる。とてもじゃないが、リックの顔なんか見られない。
「うー」
「ホント可愛いな……」
枕に顔を埋めて呻いたら、上からリックに抱きしめられた。
その反応の鈍さも含め、全てが愛おしい。
暫くしたら息苦しくなり、レティが顔を上げた。横を向いて小さく言う。
「お風呂、入りたいです」
「そうか」
リックが枕に手をついて起き上がる。
「レティ、壁の方向いてて。服を着るから」
大きな手が髪を撫で付けた。レティは頬を染めて素早く壁の方を向き、枕を握りしめる。
彼女の髪にキスをして、リックは名残惜しげに布団から出た。
レティの肩が冷えないように布団をかけ直し、床に散らばった衣服を拾った。
「俺も風呂入りたい。二人で入るか?」
背を向けていたが、答えないで真っ赤になったレティが頭を振ったのが分かった。
「冗談だ」
リックは部屋着を着てしまい、レティの服をベッドに乗せた。
「でも起き上がれるか?」
「……へ、平気です」
「じゃ、俺は先に行くからゆっくり着替えてていいぞ」
頭を撫でてリックが洋服を持って部屋を出ようとした時、レティは手をついて布団からのそのそと出た。その瞬間。
「んっ!!?」
ズキ!下腹部にビリリと鈍い痛みが突き抜けた。驚きのあまり、ベッドの端についていた手を滑らせる。
「いっ、きゃーっ!」
「レティ!」
バタリと床に転げ落ちる音がして、リックが振り向く。
布団を巻き込んだのと、カーペットが柔らかかったおかげで、変に打ったりしなかったのが幸いだ。




