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秘密の夜3

「やめるか?」


経験どころか、恐らく行為のことすら知らないレティ。

その透明な心が砕け散りそうな気がして、リックは優しく問う。

するとレティは頭を振って、リックの首に手を回してしがみついてきた。


「こ、こわい……けどっ。リック様が、下さる……もの、受け取りたい、知りたい、同じ気持ちでいたい……からっ」


『止めないで下さい』


最後に消え入りそうなほど小さく放たれた言葉。

泣くほど震えて怖いくせに、それでもリックに応えようとするいじらしさ。

それが男としての心の急所を甘く突き刺してきた。


「そうか……」


リックは呟き、背中をゆっくり叩きながらレティが落ち着くまで待った。

暫くすると涙が止まって呼吸も落ち着き、赤い顔でもたれ掛かるだけになった。

枕元に置いているティッシュを取り、顔を拭いてやる。


「大丈夫か?いいか?」


頬にキスをして耳元で訊ねたら、レティはコクンと頷く。

リックは、再び華奢な体をそっとベッドに沈めた。


「レティ」


甘く低い声に反応して、潤んでたくさんの光を溜めた瞳がリックを見た。

優しく笑って見せて、それから悪戯するように桜色をしたレティの唇をペロッと舐めた。

するとレティはクスッと笑ってくれて、そのせいで少し唇に隙間ができる。

そこに自分の唇を重ね合わせ、舌でゆっくりレティの口の中を擽って回った。

段々とレティの緊張が解れ、ゆっくりとされる瞬きの合間に見せる瞳が蕩けてきた。


(もしかして……)


不安なのに掴まるものもない、手も繋がっていない、おまけにリックの顔が長い間見えないと不安になるのではと思った。


(何にも知らなきゃ、そうなるよなぁ……)


片手が塞がるのは不便だが、リックはレティの右手を取って指を絡める。

しっかりと繋がった指先に安堵したのか、レティがふわりと笑ってくれた。


(やっぱりリック様は優しい。もっと、近づきたい……)


薄暗い部屋に響く二人の浅い呼吸。たまに頭を左右に動かしながら、レティはリックの手を時折きゅっと握ってくる。

『大丈夫、側にいる』という言葉の代わりに強く握り返し、レティの言葉なき反応に応えた。

じわじわと二人の時間が濃くなっていく。

巧みな彼に導かれ、ぼーっとした頭が白く強く弾けた後。


「大丈夫か?」


呼吸を整えるレティを優しくリックが見下ろす。けれど同時に。


(俺が限界だな)


愛してやまないレティの放ったあまりに艶めかしい甘さ。今までになくリックを惹き付けた。

震え汗ばむ体。額や頬に張り付く髪。

あまりの衝撃に投げ出されて晒され、桃色に染まる華奢な全身。

焦点の合っているのか分からない、涙が浮かんで煌めく瞳。

短い呼吸に小さく開いた口。


「レティ、すまない」

「え……?」


一度閉じた瞼が開く。今までとは変わり、目の前が真っ赤に染まった。

痛々しい悲鳴が部屋に響く。




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