HAPPY BIRTHDAY6
「リチャード船長、誕生日おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
クラッカーから飛び散る紙吹雪に紙リボン。集まっていた仲間たちが、口を揃えて叫んだ。
眩しい夕日に目を細め、手を翳すリックにたくさんの拍手が送られた。
ディノスも食堂から出てきて、それから全員がそれぞれ好きな飲み物を手に取り始める。
レティはユーシュテが持ってきたトレーから、リックにビールジョッキを渡す。
自分は小さなグラスに注がれたシャンパンを取った。
「それじゃ、改めて……」
二人組のクルーがいつの間にか物干しスペースのところに上がり、マイクを持って取り仕切る。
「光の楽園を制す我らの船長を祝い」
「強さを称え」
「レティアーナちゃんとの幸せな毎日を祈って」
「どこまで続くんだよ。締まらねぇな、オイ!」
自分達で突っ込みを入れ、全員がお腹を抱えて笑いだした。
「まあ、とにかくめでたいのでカンパーイ!」
掛け声がかかったので、皆飲み物を高く掲げてカンパイを叫ぶ。
それから好きなだけ飲み食いして、歌ったり騒いだりそれぞれ楽しんだ。
リックは入れ替わり立ち替わりクルーが祝いの言葉を言いに来ていて、その相手をしていた。
笑ったり頭をわしゃわしゃと撫でられてるクルーを見て思う。
(リック様は皆さんのリーダーと言うよりは、お兄様みたいな存在なのかもですね)
レティはその光景を優しく見守った。
心温まる気持ちで海を見ながら目を閉じて、鼻歌を口ずさむ。
それは無意識に鼻歌から声となって広がった。
日が隠れる前、一層オレンジに染まる世界の光に照らされて歌う姿は幻想的にも見える。
いつだって、歌詞はないのに美しく人を惹き付ける声。
歌に惹かれるのは人だけではないのかもしれない。
少し離れたところでイルカが二頭ジャンプして海の中に消えた。
歌い終わったら、静かになっていた甲板からたくさんの拍手と口笛が飛んできた。
「いつもの歌じゃないな?」
拍手に頭を下げていたら、リックが隣に来て問う。
「はい。お酒を買ったバーで流れていたんです。覚えてしまったので」
「耳がいいんだな」
リックの手が、レティの頭を指先でくしゃくしゃと撫でた。
「マスターにお伺いしたところ、『めぐり逢い』という曲だそうです」
「いい曲だ。名前もメロディも」
「私もそう思います」
二人で顔を見合わせて微笑んだとき、ジャンが手を叩いた。
「さて!ここからはうちのお嬢ちゃん二人とコラボした、特別製ケーキの登場だよ!」
シェフが何人か係りで大きなケーキを運び込み、歓声が上がった。
「全員集まれ!記念撮影をしようじゃないか!」
ケーキの周りに集まり、正面の料理の台にカメラが置かれる。




