HAPPY BIRTHDAY4
クリームを塗る前に、シェフが何かのシロップを塗った。
「こうしておくと、生地がしっとりして食べやすいんですよ」
「なるほどですねぇー」
説明を聞いて、レティは頷く。
それからユーシュテと二人、それぞれ表面にクリームを塗っていった。
「お嬢ちゃん、こっち向いて」
ジャンの声で顔をあげたら、カメラがこちらに向いていた。
二人でケーキを仕上げていく様子を所々撮られた。
もちろん、ユーシュテがクリームを指にとって摘まみ食いした瞬間も。
下段のフルーツはシェフが担当になり、見映えのする上段の盛り付けはレティ達に譲られた。
「レティ、桃を外側に敷き詰めない?数も少ないし」
「そうだね!白と黄色と交互で?」
「オッケー」
まずは桃でぐるりと外側を覆った。
「イチゴは多いね。これだけあれば中心からお花みたいに出来るかも」
「じゃ、そうしましょ」
「中心を立てて置いたら、そこが花の蕾みたいになるよ」
レティの意見にユーシュテが頷いてくれて、ジャンもアドバイスを出した。
そうしてイチゴの花ができた後、一番外側の隙間にメロンやキウイを差し込んで盛り付けは完成した。
シェフが二つを重ね合わせ、外側にクリームを塗りつけていたら、オーブンが鳴った。
ジャンがこんがりと焼けたクッキーを取り出した。
食堂がバターと甘い匂いに満たされる。
目をケーキにしてユーシュテがテーブルを叩く。
「早く食べるのぉー」
「ユースちゃん、よだれが出てるっ!拭いて拭いて」
早く冷ますため、クッキングシートからクッキーを取って別の皿に移しながら、レティが笑って指摘する。
「辛抱だよ、お嬢ちゃん。夕方のパーティまでね」
「わかってるぅー」
「おりこうさんにしてたら、外側のクッキー余ったの食べて良いから」
「ホント!?」
ユーシュテの目がクッキーに変わったので、レティは吹き出した。
休憩にセルフドリンクから取った飲み物を飲み終わる頃、クッキーはほどよく熱を落とした。
ユーシュテが小さくなり、テーブルに立った。
「こういう作業は任せてよ」
器用にクッキーを運び、外側にペタリと貼り付けた。
「じゃあ、お嬢ちゃんはチョコレートの板に文字書いてみるかい?」
「はい!」
ジャンが手で指示を出し、シェフが冷蔵庫からチョコレートの板を持ってきた。
ホワイトチョコを口から絞り出し、板の周りに花を描いたら真ん中に
Captain Richard★HAPPY BIRTHDAY!!
と記した。
その板をジャンが中心の花の蕾を崩さないように置き、レティはクッキーをユーシュテに渡した。
それを彼女が貼り付けながら、ぐるりと一周して終わった。
「完成ー!」
小さなユーシュテの手と手を合わせ、それからジャンや他のシェフと同じように手を合わせていたら、ユーシュテはクッキーの皿に飛び込んだ。
「余り食べるの!いっただっきまーす」
「もうユースちゃんったら、やだぁ」
その姿を見て、全員が大笑いした。




