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操り人形(マリオネット)の歌姫5

リックの声を聞いたからなのか、少女が身動ぎして目を覚ました。


「あたしの苗」


リックが持った苗に気づき、しょんぼりとした。


「小さくなっちゃった……」

「また育てれば良い」


小さな手がリックから鉢を受け取った。


「うん、またたくさん水あげて大きくする。お兄ちゃん、この子綺麗な花、また咲かせてくれると思う?」

「大丈夫だ。きっとそうなる」


植物の暴挙のことを覚えていないらしい少女が嬉しそうに笑い、鉢に頬擦りをした。

その後、船で目を覚ました町娘と少女は、クルーに付き添われて街まで帰された。

リックとディノスはレティとユーシュテを抱え、医務室に連れていくのだった。






レティが医務室のベッドで目を覚ましたとき、ディノスとリックの話し声がしていた。


「じゃあ、俺はユースを連れて戻る」

「わかった」


レティを気遣ってか、小さくドアの閉まる音。

細やかな気遣いがディノスらしい。

ユーシュテはきっと先に目覚めたのだろう。

戻ってきたリックはカーテンを開け、 ぼーっとしたレティを見て驚いたようだった。

だが、すぐに側の椅子に座る。


「気分はどうだ?」

「私、何も覚えてません……」


景色が暗く包まれてから。


「そうみたいだな。ユーシュテが言ってた」


リックはいつものように、優しくレティの前髪ごと額から頭を撫で付ける。

レティは両手を出して顔を覆う。そして悲しくて悲しくて悔しくて、泣き出してしまった。

自分が泣くなんておかしいことだ。傷つけた側なのに。

そう思っても、嗚咽が噛み締めた唇から漏れてしまう。


「私、皆さんを傷つけてしまったんでしょうか?」


自分の歌や存在を好いて、受け入れてくれた船の仲間のことを。

襲い掛かって傷つけたのか。


「泣くな、レティ。大丈夫だ。誰もケガしてない」


それでもレティは緩く頭を振った。

操られたユーシュテの行動は見ていた。何もしていない訳じゃないのだ。


(自分自身の身も守れなくて、いつもいつも助けてもらってばかり。それなのに)


「責めるな……。レティはそれで良い。俺がそう思ってるんだ」


リックの手が首に回り、上半身を起こして子どもにするように抱き締めて背中を叩かれる。

いつもなら頷いたり返事が返ってくるのに、この日のレティは答えなかった。


(私……)




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