操り人形(マリオネット)の歌姫2
ユーシュテの手を止めようと掴んだら、手首に糸が巻き付いた。
『邪魔しちゃだめー。苛められて泣きなさい。はい、バンザーイ』
手が頭の上に上げられて、止めることができなくなってしまった。
ユーシュテは揉み続け、それからレティに顔を近づける。
「あっ!ユースちゃん……。ダメだよぉ」
ユーシュテがいつもつけている香水の良い香りがレティを包む。
レティの細い首に近づいてクンクンと嗅いだと思ったら、耳にふっと息を吹きかけた。
「いや、ちょっ!やめてぇ……っ!ユースちゃん」
逃げようと身を捩るレティだったが、糸に固定されていて殆ど動けない。
ユーシュテの手が胸から離れ、腰に回った。
レティの胸にユーシュテの豊満な胸が当たり、ふにゅりと柔らかい感触がする。
ユーシュテは空いた片方の手で、レティのスカートの中に手を入れようとしはじめた。
「も……、ユースちゃんてばぁっ!」
チーン。危ない官能ドラマの様な雰囲気に、クルーが冷や汗を流して石化していた。
ユーシュテの足がレティの足の間に割り入ろうとしたとき、ディノスが走ってきてユーシュテの腰に腕を回して引いた。
「やめろ、ユース!いい加減に目を覚ませ!」
『んもーぅ。良いところだったんだから、黙って見てれば良いのにぃ。興ざめ』
女が唇を尖らせた。
『それなら、次のゲームよ!』
ユーシュテがその場で回り、ディノスに肘をつき出した。
反射で腕を立ててガードしたら、その腕を掴んで投げられてしまった。
「!」
吹っ飛ばされたディノスの背中をジャンが受け止める。
「副船長!ケガは?」
「いや、何ともない。すまん、助かった」
ディノスは立ち上がった。
いくら彼女の力が強いといっても、普段男を軽々と投げ飛ばすほどの力はなかったはずだ。
操られて意識がないことで、能がかけている力のセーブが少し外れているのかもしれない。
『今度は貴女も参戦して?』
レティの背中に何かがズブリと突き刺さった。痛くはないが、酷く気持ちが悪い。
「ひあっ……あ!」
直後に意識が朦朧として床やみんな、船の輪郭が歪んで見えた。
『何この子。あからさまに弱そうなのに、抵抗してるの?無駄なんだから楽になっちゃえば良いのに』
胸を押さえて浅く呼吸をするレティを見て、女が片手を腰に当ててあきれたように言った。
「……はぁっ、はぁっ」
(頭がクラクラする……。けど、ここで負けちゃったら、私もユースちゃんと一緒に皆と戦うの?ユースちゃんも止められない、自分も止められないなんて……)
レティの体が淡く光った。
いつもなら光の波が全身を走るのに、今回はホタルの光のように点滅しては消えという状態が続く。
「堪えようとしてるのか、レティ」
駆け付けて助けたいのに、リックやディノスをうねうねと動く植物が邪魔していて近づけない。
『なら、もっと強力にしちゃう』
「や……めっ……て」
全身を糸が緩く巻き付いていき、背中に刺さったものが更に深く入る。
レティの光は粒が飛び散るように消えてしまった。
(もう意識が……)
歪みながらも見えていた景色は、周りから黒くなって姿を消していった。




