まさかのケンカ勃発!?7
レティ達は船に戻り、厨房で姿を見せる果物を待った。
カウンターから身を乗り出し、ユーシュテと見ている。
ジャンが包丁を入れるが、腕に血管が浮き出るくらい力を込めていると言うのに、全然割れない。
「固いですねぇ、ジャン様」
「そんなに固いなら、外で殻をハンマーか何かで割るしかないのかもねー」
「そうだなぁ。思いきって割ろう」
ジャンが物置からハンマーを取ってきている間、ユーシュテは果物を抱えてレティと甲板に出た。
「何だかんだユースちゃんも、リック様のこと考えてくれてるんだね」
「あたしを助けてくれたのはディノスだけど、船にいることを許してくれたのはリチャードだもの。毎日のようにケンカばっかしてるけど、感謝もしてるのよ。ちゃんと」
二人で縁に座って話していたら、レティが異変に気づいた。
コポッ。泡のような音が聞こえた気がしてユーシュテの手元を見たら、持っているライヤーフルーツの下が黒くなっている。
そしてヒビが入った。パキ……ン。
「ユースちゃん!」
レティが声を上げると同時に殻が弾け、中身の液体が飛び出した。
「きゃっ!」
ユーシュテが驚いて取り落とす。
そして、弾けて落ちた柔らかそうな黄色の中身が震えた。レティはユーシュテを反射的に突き飛ばした。
「ユースちゃん、危ないっ!」
シュルルルっ!細い糸のようなものがそこから飛び出してレティが巻き込まれた。
「あっ、きゃああああっ!」
船内にいたリックとディノスは、それぞれの部屋で表情を険しくする。
(何か来た!)
外では、腰に糸を巻きつかれたレティが宙に浮かされていた。
ユーシュテがその手を掴んで降ろそうとするが、びくともしない。
「何これ。動かない……」
仕方なくスカートをたくし上げ、足に取り付けられた護身用の短剣を取り出す。
「ちょっと待ってて、レティ。切るから」
その足元で、実が淡く光り動いたのをレティは見つけた。
「ユースちゃん!また来るっ!逃げてっ」
「え!?」
新たに吐き出された糸はユーシュテの両手を縛り上げてしまい、カランと音を立てて短剣が床に落ちた。
「ちょっと!何なのこれ!ただの食べ物じゃなかったわけ!?」
ヒールの足が、憎々しげに実を蹴り飛ばした。
ペチャッと音を立て、それが少し離れたところに転がる。
『酷いわ……』
レティでもユーシュテでもない声が嘆きの言葉を出した。




