まさかのケンカ勃発!?5
「あっはっはっは!抜けてるところがお嬢ちゃんらしいじゃないか。でも、当日になる前に分かって良かったなぁ?」
「はい……」
レティは少し落ち込み掛けた。
「プレゼントはこの珍しい果物を使ったケーキよ。でも、リチャードがついてきたら面倒だから、絡んできたら追い払ってちょうだい」
ユーシュテに耳打ちされた言葉を聞いて、レティは頭と手を振った。
「いいわね?レティ」
「えっ。無理だよぉ」
「リチャードへのプレゼントの為なの。好きなんでしょ!何とかして」
「えーっ。……ううぅ」
しょんぼりしてレティは渋々頷いた。
ジャンとシェフ何人か、レティ、ユーシュテの数人で甲板に出たところ、階段の側の縁にリックが足を組んで座っていた。
「レティ、出掛けるのか?」
「はい」
怒ると思いきや、リックはレティを手招きした。側に寄ると頬を撫でられる。
「気をつけるんだぞ。みんなの側を離れるんじゃない」
「はい。分かりました」
両手を繋ぐリックに、レティは意を決して口を開いた。
「あ、あのっ。リック様、もっ……。待ってて下さいねっ……。お利口さんに待ってられなかったら、……えとっ、き、……嫌いになっちゃう……かも?です!」
「!」
レティの発言を聞いたリックが一瞬にして固まった。
「わーっ!ショックのあまり、リチャードさんが石になったーっっ!」
シェフがわーわーと騒いで慌て出した。しかし、言った本人のレティが一番驚く。
「リッ、リック様!」
そんなレティの腕を、ユーシュテが引っ張って連れていく。
「行くわよ。時間がないんだから」
「でもリック様が……」
「大丈夫よ、ほっときなさい」
レティは振り返りつつ、船を降りるのだった。
(リック様、ごめんなさいっ!後できちんとお話しします……)
「店主がその果物を見つけたのはこっちの方向だなぁ」
「早くぅ。疲れちゃうー。甘いの食べたい」
「ユースちゃん、よだれよだれ!」
レティはユーシュテの口元を指摘する。
街から外れて森の中を結構進んできたのだが、普通の木や草ばかりで果物の木など見当たらない。
少し日も落ち掛けてきて、一行は立ち往生していた。
(あんまり遅くなったら、リック様たちが心配しちゃう)
レティは辺りを見回した。すると、ドングリを頬張るリスがすぐ上の枝にいるのが目に入った。
「あなたは知らないよね……?この島だけのフルーツ」
『知ってるよ』
ドングリを頬張りながら、リスが答えた。
「本当!?」
「ちょっと、独り言にしては声が大きいわよ」
ユーシュテはレティに言いながら、その視線の先を見て驚いた。
「貴女、誰と話してるの?レティ!」
レティは構わずリスと会話を続ける。
『ライヤーフルーツのことでしょ?それなら日が落ちてからの方が、淡い光放って見つけやすいよ』
「そうなの?」




