まさかのケンカ勃発!?4
「あんまり見られると緊張します……」
「そう言わないでくれ。本当は、可愛いレティをいつでもずっと見ていたいんだ」
「リック様っ……!」
振り向いたレティの頬が赤く染まる。
驚きと恥ずかしさと嬉しさの混じる表情が心を擽って、リックはレティの頭に手を回した。
「レティ……」
二人の目が閉じていき唇が重なろうとした瞬間、ノック無しで無遠慮にドアが開かれた。
「ひゃ……」
驚いたレティの頭が揺れてリックの手から滑り、体勢を崩してソファに倒れてしまう。
ドアを開けたのは相変わらずのメイド服姿のユーシュテで、ソファの所にやって来る。
「レティ!いたいた。やっぱりここだったのね。ちょっと付き合って」
手を伸ばしてレティの腕を掴み、引っ張り起こす。
「いちゃついてるところ悪いけど、ちょっとレティを借りるわよ、リチャード」
三頭身くらいになったレティが手足をプラーンとさせたまま、ユーシュテの胸に抱えられた。
「お・ま・え・はっ!ちったぁ空気読めやっ!!」
「無理よ。空気は呼吸するためのものだもの」
良いところを邪魔されて怒るリックに対し、ユーシュテはフフンと笑って言い返した。
「じゃ、後で返すから」
「こらっ!今返せ!」
勝手にレティを連れ去るユーシュテを、リックが慌てて追いかけた。
ところがリックの目の前で、残酷にもドアが閉められてしまう。
「男用無しだから、そこで大人しく待ってなさい。邪魔するならディノスに止めさせるから」
リックに向かって舌を出し、何か文句を言うリックを無視してレティを抱え、ユーシュテは走った。
「ユースちゃん、どこ行くの?」
「食堂。今から説明してあげるわよ」
「『超美味な珍食材の行方を探せ』?」
レティは食堂のテーブルに置かれたポップを見た。
「ジャンが街で聞いた情報よ。この島でしか採れない、しかもあまり見つからないけど夢のように甘い味のする果物があるらしいの」
手を組み合わせ、女優のように目をキラキラさせたユーシュテが言う。
「へーえ」
(用件が食べ物なんて、ユースちゃんらしいなぁ)
「それを探すのよ。あたし達二人で」
「え?」
「噛み砕いて説明するとな……」
ジャンが二人の向かいの椅子に腰を下ろし、レティに説明した。
どうも街で賑わう露店を見掛けて寄ったところ、物が売り切れていた。
店の主人の話からそれが美味しい果物であり、それを探すなら女性の嗅覚の方が見つける確率が上がるらしいと言うことだった。
「もちろん食べ物が関わるから俺も行くし、それを見つかったらケーキにしようと思ってるんだよ」
「ケーキですかぁ」
「何せ、船長の誕生日は明日だからね」
「……え?」
「貴女、自分の男の誕生日も知らなかったの?レティ」
呆れた声のユーシュテに、ジャンが大きな声で笑った。




