まさかのケンカ勃発!?
世の中の男性が苦手とするもの。その内の一つが【女同士のいさかい】。
家庭をもっているなら、母娘であったり娘の姉妹同士だったり。
職場なら女性社員同士、学生なら友達同士などなど。
陰湿で目立たないこともあるが、気づいたってどこから突っ込んでいいのか分からないことが多い。
不用意に突っ込めば火に油。言葉の猛攻を受けかねない。
触らぬ神に祟りなし、時間の解決に任せたくなるものだ。
リックの船では、たった二人の紅であるレティとユーシュテ。
最初こそトラブルはあったものの、その後はレティの行動で仲良くなった。
元々レティがふわふわして鈍い性格のせいか、少々突っ込みのきついユーシュテと衝突もなく過ごしていた。だがある日のこと。
「やめて。やめてお願い、ユースちゃん……っ」
嫌々と頭を振るレティを、ユーシュテは無言で睨みつける。
ゆっくりと一歩一歩レティに近づいていく。レティの顔が青ざめた。
そんな声にも表情にも構うことなく、美しく彩られた爪を持つユーシュテの手がレティに伸びる。
「あ、いやっ!」
レティが悲鳴を上げた。
二人の女が争いを起こしていると言うとんでもない状況が船に広がっており、集まった船員を始め、リックもディノスもどうするべきか手をこまねいていた。
レティはユーシュテに懐いているし、面倒見のいい彼女は何だかんだ言いながら、レティを構ってやっていた。そんな関係だったはずなのに。
それは八時間ほど前に遡る。
わいわいと賑わう食堂では、ほかほかのスープとパエリアにお腹を空かせたクルーががっついて食べていた。
「……はぁ」
レティは俯いてため息をつき、スプーンを止めた。
「ん?」
隣に座っていたリック、正面に座るディノスとテーブルにいるユーシュテがレティを見た。
「全然減ってないな」
ディノスの言う通り、レティの皿もカップも中身は殆ど最初と変わらない。
「レティ、具合でも悪いのか?」
リックが顔を覗き込み、心配そうに額に触れた。
「違います!元気です」
慌ててレティは否定をする。
厨房に近いところに座っていたせいか、話が聞こえたジャンの顔がカウンターに出た。
「お嬢ちゃん、もしかして口に合わなかったかい?それとも嫌いなものでも?遠慮せず、言ってくれていいんだよ」
「ち、違います!ジャン様のご飯はいつもとても美味しいですっ!」
「なのに全然減ってないのはどういうわけよ?まさかと思うけどダイエット?」
「お前と違って少食気味なレティに、そんなものが要るか。」
「何ですって!?」
ユーシュテにリックが突っ込みを入れたせいで、二人の間に火花が散る。
ディノスがすかさず口を挟んだ。
「二人とも静かにしろ。レティアーナが話せないだろう」
すぐに静かになり、レティは申し訳なさそうに事情を話した。




