どちらがお似合い?7
リックとディノスが助走をつけてボールを放った。
一度目は二人とも何の力も使わずにストライク。
二度目の投球でリックは左手を前に払った。風の力が自分のボールに後押しをかける。
反対に右手は横に向けた。ディノスのレーンに小さな風の壁ができる。
ボールは勢いを失い、コロコロとゆっくり転がってガターに入ってしまった。
「あぁあああ――っっ!?」
ユーシュテが拳を下に向けて声を上げた後、端のピンを押して倒しにかかった。
ところが間に合わず、反対側の端のピンを数本残してゲームオーバーとなってしまったのだった。
「もぉおーっ!リチャードのバカヤロがぁーっ!」
ユーシュテがキーキーと文句を言い、リックは舌を出してレーンに背を向けた。
「悪く思うな。これも頭脳戦だ」
逆転勝ちのゲーム終了で、クルーが盛り上がる。
「あーあ……」
とぼとぼと帰ってきたユーシュテを、ディノスは膝をついて手を差し出し迎えた。
「あたしはディノスを勝たせたかったのに」
「悪い、ユース」
「ううん。でも、……まあいっか」
小さい手を伸ばして背伸びをし、ぎゅっとディノスに抱きついた。
それからリックの方を見たらレティが手を叩いて喜んでいたので、悔しさは水に流すことにした。
「あの子ががっかりするのは見たくないもんね……」
「ユースはレティアーナのいいお姉さんになってるようだな」
「そうかしら?」
「そうなんだろう」
ディノスとユーシュテは顔を見合わせて笑い、レティとリックを見守っていた。
夜、レティはリックの部屋で一緒にソファに座り、今日のことを話していた。
「リック様もディノス様もお二人ともお強くて、どうなるのかドキドキしちゃいました。でも、最後はさすがリック様でしたね」
「勝負にレティが関わってちゃ、負けらんないだろ?」
「……あれ?そうなんですか?」
(そうか。レティは話の途中で外れてたから知らないのか)
きょとんとしたレティの様子に、リックはその理由を思い出した。
「まあ、そう……。色々あってな」
「そしたら、またリック様に代わりに戦ってもらってたんですね」
ソファに手をついて身を乗り出すレティのその腕を掴み、細い体を反転させながら器用に自分の膝の上に引き上げる。
そして、またレティを困らせる悪戯を思いついた。
「そういうことだな。レティ」
「はい」
「ご褒美をくれないか?」
「へっ?」
「だって俺はレティの為に戦ったんだぞ?」
「そうですね……。何か欲しいものとか、おありですか?」
顎に人差し指を乗せて考えている彼女。リックの顔が悪戯に歪んだ。




