どちらがお似合い?5
機械がボールを戻し、超真剣な顔でボールを放つ。
しかし今度は押し出す力に勢いがなかったのか、ピンの前で止まってしまった。
押してきていいと手で仕種され、レティが走ってボールを押し、ピンが少し倒れた。
じっとそれを見守っていた仲間は顔を穏やかに微笑ませる。
(ちょっと物知らないしトロいし、たまに、いや結構天然だけど)
(まあレティアーナさんって、あんな感じだよな)
(そう、あんな感じ。あれでいい)
(オッケーです)
レティが喜びながら戻ってリックに撫でられている時に、気を取り直した司会が仕切り直した。
レティの初ボウリング体験で、練習の時間は終わってしまったらしい。
「では!花派のディノス副船長チームとリボン派のリチャード船長チーム、勝負を始めます!両チームメンバー位置について用意、始め!」
どちらもクルーが先に投げ始め、さすがに一回目はストライクが無かった。
三人終わり、リックとディノスがレーンに立つ。
「キャーっ!ディノス行け行けー!負けるなー!」
ユーシュテがディノス側のテーブルで、両手を上げてピョンピョン跳ねた。
「リック様、頑張ってください!」
レティもリック側の椅子に座って口に手を添え、声援を送る。
「俺はクルーやお前の趣味に関しては個人の自由だと思うしどうでもいいが、勝負に関しては負けるわけにはいかん」
ディノスがボールを持って、リックに言う。
「勿論だろ。お前と手合わせなんて中々ないからな。手加減なしの真剣勝負だ」
リックもニヤリと笑い、二人で同時に助走をかけた。
美しいフォームでやはり二人同時に放たれたボールは、ほぼ同じタイミングでピンを貫いた。
耳に心地いい音がして、ピンが弾け飛びながら倒れていく。
「二人ともストライクだぁ――っっ!」
わっと完成が上がる。戻ってきたリックに、レティは思わず走り寄って抱きついた。
「リック様、リック様!とてもカッコ良かったですっ!ビックリしました」
「そうか。レティが喜んでくれて良かった」
リックはレティを片手で抱え、椅子に腰を下ろして彼女を膝に座らせた。
「リック様……。皆さんの前でちょっと恥ずかしいです」
クルーから見えないように、レティはリックに身を寄せて少し体を小さくした。
「気にしなければいいさ」
相変わらずの初々しい反応に、大きな手がむにむにと頬を揉む。
「ディノス様もお強いみたいですねぇ」
「冷静沈着な奴だが、中には熱いものを持ってるからな。それにお互い大事な人に見守られてちゃ、カッコ悪くて負けらんないだろ」
離れたところにいるディノスを見れば、肩に乗ったユーシュテの頭を指で撫でてやっているようだった。
どちらのチームもクルーはどんぐりの背比べで、追い抜いたり追い越したりな感じだ。
ところが、本気モードに入った二人のリーダーは何回も連続ストライクを放ち、どちらも譲らない。
「あの二人だけ別次元って感じだな」
船員たちが話している間に、ジャンがレティの側に来てアイスを差し出した。
「はい、お嬢ちゃん。船じゃないから自販機で買ったやつだけどな」
「ありがとうございます」
「もう一人のお嬢ちゃんはどうした?」
受け取って包み紙を破りながら、レティは隣の椅子を見た。先程までわーわー騒いでいたユーシュテの姿がない。
「あれ?ユースちゃんどこ行ったのかな?」




