どちらがお似合い?2
「それで大体のお題は満場一致だったんですけど、花かリボンかで意見がパッキリ割れてるという次第でして」
(くだらん……)
ディノスは呆れ、心の中で突っ込みを入れた。
「で、船長達はどっちが似合うと思います?」
「レティはどっちが好きだ?」
「あーっ!ダメです、船長!これは男から見てのジャッジですよ」
リックが本人に振ったら、船員達に止められた。そこを宥めてレティを見た。
「まあ、良いじゃないか。参考までに」
「お前……。こんなのに加わるのか」
「面白そうだろ?」
ほとほと呆れた表情のディノスに、リックは楽しそうにしながら言った。
「どっちも……好きです」
少し上を向いて唇に人差し指をあて、うーんと考えてからレティは答えた。
「だよなぁ。可愛いからどっちも似合うよなぁ?」
ポンポンと頭を撫でられて、レティは頬を染めた。
「船長ご自身はどうなんすか?」
催促され、リックは頭の中に想像を膨らませた。
花畑で花冠を頭につけたレティ。花冠をとって、一輪の花を髪に着けても似合う。
何とも可愛らしい感じだ。
『見てください。リック様っ!こんなにたくさんのお花です』
なんて摘んだ花束を腕一杯に抱えてニコニコ言われたら、間違いなく男でも胸キュンだろう。
一方リボンの方は。
カチューシャのように髪に着けても、結んだ髪に着けても似合う。
元々着ているワンピースやブラウスにもリボンが着いていたりするし、可愛らしい。
想像は更に膨らんだ。
部屋にたくさん散らばったリボンの合間にいるレティ。それから……。
『リック様っ』
プレゼントの大きい箱から、頭にリボンを着けて飛び出してもイケる。
ここまで似合うなら、いっそのことリボンだけでも……。
『絡まって取れません。リック様ぁ……』
細くて白い華奢な体に、人目に晒せない所を隠すように全身をリボンが取り巻き、床に倒れた彼女が現れた。
(――っ)
まあ、想像がよくここまで膨らむものだ。
リックの天秤は後者に下がった。
「俺はリボンだ……」
「……」
口元を押さえて顔を赤らめたリックを、ディノスが無言のまま白い目で見た。そんな彼に声がかかる。
「ディノスはどう思うわけぇ?」
ユーシュテが皿を片手に歩いてきて訊ね、それから彼女はフォークに取ったタルトを頬張る。
「どっちでもいいとは思うけど、強いて選ぶなら花かなー。でも、今回女の意見は票に入らないんでしょ?」
「ユース、食うなら座れ。落ち着きがないし、行儀が悪い」
ディノスから注意され、ユーシュテは足を組んで座る。
皿を置き、レティにもおやつを取りに行くようにリアクションした。
レティは輪から離れ、ジャンの元へ向かう。
全員の視線が自分に注がれていて、ディノスはため息をついた。
料理長と楽しそうに話すレティの横姿を見て答える。
「そうだな。雰囲気から見たら花だな」
「あら、決着つかないわね」
ユーシュテはタルトを口に入れて、楽しそうに言った。




