悪夢の終わり6
空気を取り込むのに呼吸を短く繰り返していたが、それが整うとレティは完全に寝入ってしまった。
リックにもたれ掛かって気持ち良さそうに眠るレティの額を、人差し指で恨めしそうに弾く。
「悪い子はお仕置きだ。今回はこれだけで良かったと思えよ。……ったく」
(俺の近く以外でのアルコールは禁止だな)
普段の無意識でさえ行動が恐ろしいと言うのに、アルコールが混じったら更に質が悪い。
リックは身に染みたのだった。
今日は、これ以上一緒にいない方が良さそうだ。
いくらレティを大事にすると決めていても、理性の保てる範囲と言うものがあるのだ。
そう思って使用済みの籠にカップを入れ、再度レティを抱き上げて部屋に連れていった。ところが。
コンコン。夜中の三時頃、ノックがして控え目にドアが開いた。
自分のベッドの脇に気配を感じ、リックは目を覚まして起き上がった。枕元の電気をつける。
「リック様……」
目を擦りながらも眉を下げて立つレティの姿があった。
アルコールは少し抜けたようで、夜着に着替えていたし口調はいつものに戻っていた。
「途中で起きちゃって、一人でいると寝られないしちょっと怖い気もしますし……。一緒に寝てもいいですか?」
「……」
レティを布団に招き入れながら、リックは思った。甘えてくるのは嬉しいし可愛いのだが。
(何の拷問だ……)
そんなことを全く知るよしもないレティはリックに身を寄せて夜着を握ってくる。
そして三十分もすると先に寝てしまうのだった。
(今度会ったら、マスターに一言物申してやる……)
【騎士の章】 終わり




