悪夢の終わり4
その夜、甲板ではリックの勝利を祝って、誰が始めたのか勝手に飲み会が開かれてしまった。
「やっぱり船長は最高だ!」
「どこまでもついていくぞ!」
「俺が女なら絶対惚れちまうぜー!」
勝手に酒盛りでワイワイと話すその言葉を聞いて、縁に腰を掛けて飲んでいたリックは呻いた。
「最後のは勘弁……。男に好かれても」
「モテモテだな」
「モテる男は辛いわねー」
通り際にディノスとユーシュテがからかいで好き勝手言い放って行った。
二人に言い返す前に、膝に温かい感触を、感じた。
「リッ……ク……まぁ」
トローンとした目のレティが、両手をリックの膝に乗せている。
最初に、アルコール度数の少ないものを飲んでいたのは知っていたが。
極端に弱くもないが強くもないことを知っていたので、あまり飲みすぎないように釘を指していたはずだ。
しかし、これだけ甲板の床に酒瓶が集まっていたら、夜で暗いし自分の飲める酒もそうでないものも分からなくなるだろう。
立ち上がろうとしたがうまくいかないらしく、レティは腕と顔だけを乗せてきた。
その姿を改めて見て、リックはギクッとした。
赤くなった頬と目元に、起きているのかいないのか、半分しか空いてない目。
おまけに足は崩れてスカートが微妙に上がっていた。
(おいおいおい。誘ってんのか……?)
「リックしゃまぁ……。ちゅき……れす」
(舌っ足らずプレイ!!)
開いた口が塞がらない。無意識に繰り出される攻撃に、リックの顔が真っ赤になる。
「ふにゃぁ……」
力があまり入ってないレティがずり落ちかけ、リックは慌てて両腕を掴んで引き上げた。
膝に座らせたが、腕に寄りかからせようとするとのけ反ってしまうので、胸に頭を寄せるように導いた。
「レティ、眠いなら部屋に連れてくぞ?」
「やー……れす」
リックのシャツを握りしめ、必死に目を開けようとするが睡魔に負けるのは時間の問題だった。
レティはリックの横に置いてあるグラスに気がついて、手を伸ばした。
「お……みずぅ」
「こらっ!それは水じゃない!」
リックの飲みかけたお酒だ。しかもリックは強いのでアルコールがかなり高い。
慌ててレティの腕を掴んで同時に腰を引いたら、力が抜けていることを忘れていた。
「にゃ……」
猫のような声を上げて、反対側に反り返ってしまった。
「しまった!」
慌てて腕を一纏めにして掴んだため、床に頭をぶつけるのは免れた。が……。
上半身が反ったために、スカートが巻くれ上がった。
風のいたずらも手伝い、臍が見えるほどワンピースの裾がひらりと上がった。
(水色!!)
艶かしい白い足と下着がリックの前に姿を見せた。
船員は皆自分達の話に夢中で、この素晴らしいアクシデントに全く気づいていない。
(もうヤバイ!!!)
目にも止まらぬ動作でレティを抱え上げ、船内へ駆け込んだ。




