呼び覚まされる新たな契約7
丸いステージにじわじわと光の線が広がり、紋様になった。
『力が欲しいか』
場内に低い声が聞こえた。
リックもようやく正気に戻り、起き上がった。ウィルとギルは辺りを見回す。
「ウィル!これはまさかぁ?」
「探していた!やはり封印はここにあったか!」
魔法陣から出た光が上へ突き抜けた。青白いそこから、縞模様の黒い大蛇が姿を見せる。
「海、蛇……?」
その大きさにアルは驚いた。
『何故力を求める……』
二つに分かれた赤い舌をチロチロと細かく動かしながら、大蛇は問う。
「大事なものを守りたい」
国を、友達を、愛した人を。
アルは膝と手を着き、頭を下げた。
どんなにみっともなくても構わない。今は助力に頼るしかない。
「ただの一度きりでも構わない。どうか力を貸してくれ……っ」
『ならば、力を求めよ。我と契約せよ。お前の大事なものを預けよ』
「やめろ!お前を探していたのは俺達だ!ギルと契約を……」
ウィルが慌てて大蛇に手を伸ばすが、青白い光に阻まれてしまった。
大蛇に見てもらえもしない。
舌打ちをして、獏に命じた。
「海蛇を止めろ!」
獏が黒いオーラを纏って突進をする。
しかし、青白い光が獏に当たった瞬間、電撃のような衝撃を与えて獏が床に転がった。
『さあ。差し出せ』
アルは顔を上げた。
「差し出すって言っても、何を……」
『何かを想う強い気持ち、心。契約だ』
「うわ!」
アルの胸が青白く光った。床の紋様と同じ小さな魔法陣が左胸に吸い込まれていった。
それから体が一瞬青白い光を放つ。それが収まったら、アルの体に力が溢れた。
「契約とられてんぞぉお!どうするんだよぉお、ウィル!」
「こうなったら契約者を殺すしかない!殺して契約を破棄させて奪え!立て、獏!」
獏が立ち上がる。ウィルとギルも再び戦闘体勢に入った。
「なんだ?レティのおかげ……なのか?左の違和感がない」
ぼやけて黒くなっていたリックの視界が澄み切っている。
リックは笑いを浮かべた。リックの魔法陣も現れ、目から風が舞って再び鳳凰が現れた。
「アルも契約者になったんだな」
「契約者?」
「ああ。太古の強大な力を持つ生物に自分の大事なものを預け、共有することで契約をかわすんだ」
大きな生物三体がいることで、広い会場も狭く見える。
「獏、もう一度悪夢だ!」
獏は口から勢いよく煙を放った。鳳凰が降りてきてリックはその足に掴まって上空に飛ぶ。
アルの方は、大蛇が尻尾でアルの体を持ち上げ、シャーッと唸った。
そして何処からか大量の海水が津波のように流れて煙を凪ぎ払い、ウィルとギルを襲った。
二人とも流されて獏と一緒に壁に叩きつけられた。




