呼び覚まされる新たな契約4
「あんたが自分に対して自信なくしてたら、レティのために戦ったり走り回ってるあたしたちはどうなんのよ。しっかりしなさい」
「うん……」
「いい返事ね。それじゃ、今から拘束を外すわ。でも途中で敵に気づかれない方がいい。足が自由になるまで、枷や鎖を腕の力で何とか支えてちょうだい。下に落ちたら音でバレるわ。なるべく早く作業するから」
「分かった」
ユーシュテはレティの腕を軽々と移動する。
手首に膝を着いて、小さな腕で抱えるようにした鍵を枷の穴に差し込んだ。
それを見ていたら、ユーシュテが手を止めて振り返った。
「見られてたら落ち着かないから、あっち向いてて。リチャード達を応援してあげて」
「あっ、はい」
レティはリックとアルに視線を戻した。二人はやはり防戦になっている。
受け止め、押し返すだけではやがて体力が尽きてしまうことは分かっていた。
(左から来る!)
リックは重い剣撃を受け止めた。左にビリビリと振動が走る。
「息が上がっているな。このままじゃ勝敗はいずれつくぞ」
「ハッ……。気のせいじゃないのか?」
剣を振り切り、リックは気配を掴む力に集中した。
「今度はこっちからだ!」
瞬発力には自信がある。強めに地面を踏み込んでウィルに飛び込む。
やはり彼にも剣で受け止められたが、腕に体重をかけて押し込んだ。ギチギチと剣が音を立てる。
「力押しか……。勝負をつけようと焦ったな?」
「!」
驚いて一瞬何が起こったか自分でもわからなかった。
リックの腹にウィルの膝が食い込んでいる。
鎧もつけていないリックに、鎧のブーツを履いた重い足が食い込む。
「他の場所のガードがゆるゆるだぞ」
体の回転を利用し、そのまま蹴り飛ばされてリックは吹っ飛んだ。
地面に肩を引き摺られるように、倒れた。
剣はしっかり握ったままだったから、手から離れずに済んだ。
「リック様!」
「リック!」
レティとアルの声が重なった。
「てめぇは余所見してんじゃねぇよ!」
ギルが二つの短剣を揃えてアルの右肩に突き刺した。
その上押されて食い込んだものが、非情にもグリッと動かされる。それから剣が勢いよく引き抜かれた。
「うぐあぁっ!」
アルは声をあげて肩を押さえる。シャツや腕を深紅の液体が伝って汚す。
その時に、レティの右手の拘束がカチャリと音を立てた。
「外れたわ!レティ、これを落ちないようにして」
ユーシュテは重い枷をレティの手首に乗せるようにして、左腕に移るために走った。
「要領は掴んだから、次はもっと早く出来るわ」
けれど、レティはそれどころではない。




