呼び覚まされる新たな契約3
「うらぁっ!ッハー!!」
弾丸のように繰り出されるギルの切っ先を避け、アルは剣で受け止めた。
(予想以上に早い……!避けるのがギリギリだ。こんな攻撃を避けながら二人も相手してたのか、リックは)
剣で凪ぎ払い、ギルを押し返しながらアルは苦々しさに顔を歪めた。
「さっきの野郎の方が強かったなぁー。お前じゃすぐに終わりそうだぜぇー?」
「確かにもう少し……、真剣に鍛練しておけば良かったかな……」
「じゃあ、あの世でたっぷりやんなぁあ!」
ギルが再び地面を蹴り、腕を交差させたまま剣を振って斬りかかってきた。
アルはまた剣でそれを押し留める。
「防がれたと見せかけてぇー」
振り切られる前にギルが自ら上へと跳ぶ。そしてくるりと体勢を変えて足で突っ込んできた。
勢いのついた足がアルの剣に体重をかける。
「……っ!」
「防戦でいっぱいいっぱいじゃ、マダマダなんじゃねぇかぁあ!?」
二つの短剣が斜めに振り下ろされた。
「くぁ……っ」
服の肩の部分が左右とも破れ、血が飛ぶ。反射で上半身が後ろに反れたため、傷が浅くて済んだようだ。
アルはチラリとリックを確認した。アルが助けに入ったと言ってもリックが不調なのは明らかだ。
ここでアルが落ちると、リックはさっきの二の舞になってしまう。
お互いに倒れるわけにはいかないのだ。
右目の視界を塞がれたリックは気配でウィルの動きを掴むことに集中していたが、掴めても呪縛のせいか右側の反応が全体的に鈍い。
攻撃を繰り出しても空振りが増えていた。
ウィルとリックの剣が、キンキンと音を立てながら一定の感覚で交わったり離れたりするばかり。
「チッ」
リックの眉根が寄って険しくなり、無意識に舌打ちが出た。
「援護が入った割には余裕がないな」
自分でも感じていることを言われ、腹が立った。
が、あからさまに感情を波立てたら自分のペースが乱れ、隙を作るだけだということを知っていた。
押される二人を見ながら、レティは目を反らしたくなるほど胸を痛めていた。
(私のせいでお二人が危険な目に……)
けど、目を背けられない。
リックはレティの代わりに戦い、アルもまたレティを助けるリックのために助力しているのだから。
「私さえ……いなければ……っ!」
自分自身に対して腹立たしげに呟いたとき、耳元で声がした。
「バカなことを言うんじゃないわ!」
「ユース……ちゃん?」
いつの間にか、ユーシュテが肩に乗っていた。
客席でレティに一番近い位置にディノスがいた。彼がユーシュテを送ってくれたのだとわかる。
ディノスは人差し指を口の前に持ってきて、今の状態を黙っておくように指示をした。




