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ラグナロクの翼 ―あの蒼い空と海の彼方―  作者: Mayu
騎士(ナイト)の章
119/451

それぞれの戦いと迫る危機4

(レティ……!)


リックは歯軋りをした。


「これはあの娘自ら選んだ道なのだ。今頃地下牢で、怯え泣いているに違いない。ケーケケケ」

「許さない……。お前をここで消す!」


リックの足元を風が僅かに吹く。それに気づいた従者が再び斬りかかってきた。

リックは腕で剣の柄を妨害して動きを止める。

従者の後ろから、カルロが言う。


「どいつもこいつも命知らずなのだ!そんなにあの娘の命が大事なら、それをかけて闘ってみるが良いのだ!お前が負ければ、あの娘とお前ら二人を反逆罪で仲良く処刑してやるのだ」

「望むところだ……」


リックは従者と押し合いを続けながら、笑って答えた。


「明日午前十時、城の地下にある処刑場に来るが良いのだ。ケッケッケ」


カルロは笑いながら去り、姿が見えなくなってから従者も素早く離れて姿を消した。







ディノスとユーシュテが街を巡り、休暇を楽しんでいたクルーを見つけられるだけ見つけて船に集めていた頃、時は夕方にかかろうとしていた。


「お嬢ちゃんはうちの大事な家族だ。無理矢理手込めにするような暴君には渡せねぇよ!」


料理長のジャンを始め、仲間が戦闘準備に息巻いていた時、ディノスが二回目の便りを放ったカモメが戻ってきた。

船の縁に留まり、じっとしている。

ディノスが筒を開けてみたら、自分の便りがそのまま入っていた。


「レティアーナの返事がない?これは一体……。部屋を移されたのか?」


届け先が分からず、カモメが戻ってきたことに戸惑っていれば、仲間がざわつき始めた。


「船長!」

「リチャードさん!」

「船長が帰ってきた!」


昨日出掛けたときの服装のまま、リックがゆっくりした足取りで夕日照らす石畳の道を戻ってくる。


だが、レティを連れていない。ディノスとユーシュテは眉間を寄せて、険しい顔をした。

甲板に上がってきたリックを見て、ユーシュテが問う。


「リチャード!レティは?」

「少し待ってくれ……」


それだけを言うとリックは船内に入る。

少ししていつもと変わらないシャツ、ジーンズ、ブーツを身につけて戻ってきた。

トレードマークの深紅のロングジャケットに袖を通し、集まったクルーの前に立った。


「レティが暴君の王子に幽閉された。彼女なりに戦ったが力及ばず、このままだと明日に命を奪われる。俺たちはそれを見過ごすわけにはいかない。相手が国であろうと同じ賊であろうと、何者であるかは関係ない。ここが彼女の(ホーム)だ。帰りを望む限り、どんな手段を使っても全力で連れ戻す!」


クルーの士気が上がり、声が空を揺らした。


「明日の九時、城を攻める」


甲板が騒がしくなる中、ディノスが訊ねた。


「アレックスはどうした?」

「アルには、動いている兵の数と配置をできるだけ把握しておくように頼んだ。あと期待はしていないが、レティの居場所も探してもらっている」

「そうか」

「明日が大詰めだ」


リックは腕を組んで、遠くに小さくそびえる城を見つめた。


「レティ、戦ったのね」


ユーシュテもディノスと反対側のリックの隣へ移動した。


「武力で戦えはしないが、レティなりにレティらしい方法で戦った」

「あの子もやっと海賊らしくなってきたのかしら?」

「どうだかな。海賊らしくなくて良いんだ、レティは。ある意味それがレティの役割だと思ってる」


海賊らしさを感じさせない。染まらない。

だからこそ伸び伸びとして場を和ませるような、誰にも成し得ないことができるのだ。

そしてその心は優しく他人の心に浸透していく。


「それもそうね……」


船の縁に腰を掛けて、ユーシュテも体を少し捻ってリックと同じように城を見つめた。



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