婚約発表と新たな試練2
『我が義弟アレックスの連れてきた、歌う平民の娘!お前なのだ!ボクチンと婚約するのだ!これは決まったことなのだ!』
指の方向を追って、後ろを見るレティ。
その様子にイライラ来たカルロは、両足を踏み鳴らして指を振る。
『バカ者!お前だ、お前!黄緑のドレスを着たお前のことなのだ!このニブチン娘!』
「……へっ?」
レティが変な声を出して固まり、リックとアルが目を見開く。
「んなっ!」
「リック!!」
ディノスの鋭い声が聞こえ、周りを見ると兵が狭まってきていた。
『兵士たちよ!その娘をこちらに連れてくるのだ!』
「きゃっ!お、お止め下さい!放して下さいっ」
レティの腕が両側からがっしり掴まれ、前へ引き摺られる。
足が浮かされて留まることが出来ない。
「レティ!」
「レティアーナ!」
リックとアルが手を伸ばして引き留めようとすると、レティとの間に一瞬にして兵士が二重の壁を作り、阻まれる。
「ディノス、まずいわよ!」
「行くぞ、ユース!」
ディノスとユーシュテもレティを追いかけようとしたが、二人の前にも兵が立ち塞がる。
「リック様っ!」
レティは足をバタつかせながらも、強制的にカルロの隣に上げられてしまった。
戻ろうとしても、兵の腕が交差して阻止される。
ディノスとユーシュテも兵にジリジリと追いやられ、ついにリック達と一緒に丸く兵に囲まれてしまった。
「王子様、どうして……?」
『どうしてもこうしても説明したのだ!お前がボクチンの妃になるのだ』
「そんな……!私には無理ですっ!」
『いいや、ボクチンはお前にすると決めたのだ!だから……』
ドンッ!レティとカルロの会話を大きな音が遮った。
会場を風が吹き荒らし、兵士が飛ばされる。
貴族達はパニックになって、開いたドアから我先にと逃げて行った。
小さい竜巻のようになっていた風が切れ、眼帯を外し、鋭い目をしたリックが現れる。
「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇ……。レティを返せ」
「リック様!」
一瞬怯むカルロだったが、汗を垂らしながら叫んだ。
『ボクチンを誰だと思っている!ボクチンの決定は絶対だ。逆らえば貴様らの命もないぞ』
「てめぇが何者かなんて関係ない。今すぐレティを戻せ。さもないと全力で攻撃にかかるぞ……」
その時、カルロの少し後ろに控えてる騎士の様な立ち居振舞いをした男が耳打ちをした。
カルロの顔が悪く歪む。
『分かった。ならばこの娘を手の届かぬところへやれば、諦めるしかないのだな?』
「!?」
レティとリック達がカルロに集中する。
機械音がして、カルロの頭の上に紐が降りてきた。
何なのか察しがついたディノスが銃を取り出して、弾を放つ。
が、カルロが引く方が僅かに早かった。
下に引っ張られた直後に、銃弾で紐が切れる。そしてレティの足が宙に浮いた。
「え……?」
立っている感覚が無くなったと思ったら床が消えていて、レティは重力に従い下に落ちてしまった。
「きゃあああああっっっ!」
悲鳴を残してレティの姿が消える。
リック達が残った兵を散らして駆けつけたときには、床は元に戻ってカルロも逃げてしまっていた。




