お姫様はだれのもの?4
此方に気づいたリックとアルがポカンとしている。
化粧もうっすらと施されて、恥ずかしそうに歩いてくるレティはどこかの国の王女のようで。
可愛らしいという言葉だけでは表現できないほどだ。
「ああ、ユース。いつもの服以外とは珍しいな。とても綺麗だ」
ユーシュテの手を取ったディノスの言葉で、二人とも我に返る。
「何処かの国の姫かと思ったぞ、レティ」
「リック様とディノス様もとてもかっこいいです」
二人とも正装しており、タキシードを身に着けていた。
リックがレティの左手を取る。アルは反対の手を取った。
「ホントホント。見とれちゃったよ。さ、此方へどうぞ、姫」
二人に手を引かれ、その後からディノスとユーシュテが続く。
ユーシュテもディノスから褒められて、嬉しそうに頬を染めている。
アルの誘導でエレベータに乗り、三階に上がった。
正面の広間が開かれていて、めかしこんだ貴族達が飲食を楽しみながら会話をしている。
「きゃあっ!あれはご飯よっ。豪華ディナー」
ユーシュテが頬に手を当ててハートマークを撒き散らし、声を上げた。
ディノスがしょうがないなぁというように笑う。
彼女がディノスを引っ張って先に中へ走った。
レティもリック達と入ろうとしたら、声がかかった。
「アル!何してるのだ?」
顔がパンパン、体もポヨンと横に広がった男がこちらを見ている。
「カルロ兄さん」
アルが気づいてレティから手を放した。
「ボクチンの知ってる貴族にはいない奴らなのだ?」
「彼らは貴族ではないんです。僕の友人ですよ。兄さん、こちらはリックとレティアーナ。二人とも僕の兄さんで第一王子のカルロです」
リックもレティも会釈をした。
カルロはアルの影に隠れていたレティに気がついた。
「フン。平民の友を連れて来るとは、やはりお前は変わってるな。ま、せいぜいトラブルを起こさぬようにするのだなん」
「はい。その言葉胸に留めておきます」
何故か少し赤くなりながら言って、カルロは去った。
「ごめんね。兄さんはいつもあんな感じなんだ」
「似てないな」
リックの言葉にアルは笑う。
「俺とカルロ兄さんは本当の兄弟じゃないから。年齢が上だから兄さんと呼んでるけどね。俺は前国王の息子なんだ。父は流行り病で亡くなって、母は父が亡くなったショックで体調を崩してから、離宮で療養してて表には顔をほとんど出さない。で、後を弟の叔父が継いだんだ。兄さんは現国王の息子で従兄弟だね」
「なるほどな」
「だから余計俺が目の敵みたいで、しょっちゅう突っ掛かってくるんだよ」
レティは噛み付くリックを、アルがのらりくらりとかわせていた理由が分かった。
いつも突っかかられているから、相手にしないようにしているのだろう。




