お姫様はだれのもの?3
降りて馬車の御者に料金を払い、三人は城の上にあるもう一つの正門を目指した。
そこに門番の兵士と受付の係が控えている。
貴族と思わしき人がたくさん並んでいた。
順番が来て、レティはメモを見せた。
「昼間王子様に街でお会いしまして。このメモを預かって伺ったのですが……」
「このサインは殿下の……。少々お待ちください」
何故貴族でもない三人が王子に呼ばれるのかと、執事であろう初老の男が思ったのが顔に出た。
その時、見慣れた顔が城から出てきた。金髪の少年のようなオーラを持った青年。
「レティアーナ!上から見えたからもしかしてって思って降りてきたらやっぱり!来てくれたんだね!」
「アル様!」
レティの手を取って上下に振る。
「殿下!不用意に外へ出られては困ります!」
「すぐ戻るって!」
アルは執事に答えた。
「やけにテンションの高い男ね……」
「俺、あのノリがどうも苦手だ」
リックとユーシュテがヒソヒソと言葉を交わした。
「レティアーナ、リックじゃない後ろの人は友達?」
「あ、そうです。ディノス様です」
友人と言うにはおこがましい気もしたが、とりあえずそう紹介した。
「宜しく」
「こちらこそっ」
ディノスとアルが握手を交わし、それからレティの手をアルが引っ張った。
「こっちこっち、レティアーナ。着替えは用意してあるからっ」
「おいおい!勝手に連れてくな!」
リックが慌てて追いかけ、ディノスもゆっくりした足取りでついていく。
薄く赤いカーペットの敷かれた床を真っ直ぐ進むと、二手に別れた通路に出た。
数人のメイドがレティを取り囲む。
「お嬢様はこちらです」
「えっ!?」
レティは驚いたが、メイドに手を引かれて連れていかれる。
「ま、待て!」
「男性の控え室は反対側、あちらになります」
リックはリックで執事に手を引かれ、反対側へ連れていかれた。
「ユース!」
「分かってるわよ」
ディノスの囁きに返事をし、ユーシュテがポケットから飛び出す。
メイドや執事の肩や頭を跳んで進み、レティの肩に乗った。
「お姫様みたいに、とびっきり可愛くしてあげてねぇー」
「畏まりました、殿下」
能天気なアルが手を振り、メイドが頭を下げた。
「あ、あの、アル様……っ」
白いカーテンに包まれた部屋の向こうへ、レティは強引に入らされてしまった。
「まず、服をお召し替え頂きます、失礼します」
「え、あの……」
戸惑っている間に、手慣れたメイドたちはレティを下着姿に剥いてしまった。
恥ずかしくてもじもじとするレティの前に、とっかえひっかえドレスを持ってきて、体の前でイメージに合わせる。
「分かってないわねぇー。その子には派手や地味なカラーは無理よ」
「!」
全員の視線が声の方に向く。鏡台に足を組んで座るユーシュテがいた。
「ユースちゃん!」
「まあ、いつの間にお嬢様のご友人が」
「では、此方のお嬢様も着替えさせて差し上げて」
「えっ!?」
レティにかかっていたメイドの数人がユーシュテの腕を掴む。
「ちょ、ちょっと!あたしはこの服以外のものは着ないわよ!聞いてるの!?」
ユーシュテも更に向こうのカーテンへ連れていかれてしまった。
数分後。淡い黄緑にフリルやレースをあしらった、肌触りのいいドレスを着せられた。
髪は上の方をハーフアップにされ、青のリボン付バレッタで留められた。
後ろへ流れる髪の合間に真珠付のピンを差し込まれ、胸にグリーンのネックレスを着け、手に短い手袋を嵌められて解放された。
靴はヒールになれていなくてグラグラしたため、ヒールの低くて安定感があるキラキラしたサンダルになった。
一方ユーシュテは黒いリボンを編み込んだ髪をアップにされ、背中と胸元が大きく開いて袖のない深紅のドレス着せられ、ヒールの高い黒い靴を履かされていた。
「苦しい……」
「大丈夫?ユースちゃん」
レティと違い、ユーシュテはコルセットで少々腰を締められたらしく、呻いていた。
「お嬢様方、此方へどうぞ」
案内されて更衣室の外に出た。先程リック達と別れた通路には、彼らとアルがいた。




