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ラグナロクの翼 ―あの蒼い空と海の彼方―  作者: Mayu
騎士(ナイト)の章
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優しき心の仇2

何時ものようにベッドに潜り込み、電気を消して体を寄せる。レティだって安心できるし嬉しいけど……。

背中をリックの胸に預けるように寝ていたが、寝返りをうった。

レティが動くときは、どんなにきつく締められていても必ず力が緩む。


「寝られないのか?」

「目が覚めちゃったんですっ。誰のせいですか!」


一度目が覚めたら、その後寝付けるまで時間がかかるものだ。

悔しさに緩い拳で胸をぽこぽこと叩いたら。

リックがパッと起き上がった。枕元のスタンドがついた。


「じゃあ、開き直って眠気が来るまで二人で起きてるか?」

「……」


その方が退屈はないし、辛くなくていい。

けど、レティの顔の横に手を着いて真上から見下ろすグレーの瞳は楽しそうにしていて、首を傾げてしまう。


「レティ……」


左手が前髪を持ち上げて額に触れる。愛しさを込めた低い声が耳を貫いて、じわりと心が震えた。

頬を包まれて、リックが覆い被さってきた。

レティが目を閉じると同時に、唇に柔らかい感触。すぐに離れて、訊ねられる。


「グロス、塗ってるか?」

「美容用のリップクリームです」

「蜜みたいにトロトロしてる。やらし……」


頭を持ち上げられ、また口づけが降りてくる。

今度は雨のように。昼間を思い出して、頭の中が擽ったくなる。

触れたり離れたり、挟まれるように啄まれたり。それから、一度枕へ戻される。


「レティ、ちょっと息吐くみたいに口開けてみて?」

「ふぁ……?」


小さな口の中の小さな歯と赤い舌が果実のように光に艶めく。

頭を何回も撫でて、耳の側で上を向いていたそれぞれの手にリックの指が絡む。

握り返す前に、リックの唇がレティの息を奪う。


「んぅっ……」


開いた口の隙間から熱を持ったものが入り込み、肩が跳ねた。舌同士が触れあって驚き、引っ込む。

けれど開いた歯の裏をなぞられ、ゾクリとして舌の力が抜けてしまった。


緊張して強ばる体を宥めるように、結ばれた手が力強く握られた。その証拠にシーツの擦れる音がする。


「ん……。ん」


逃げてしまう舌を追いかけられ、絡め取られて吸われて。

鼻をつく甘ったるい声と寄せられる眉。息継ぎの合間に、どうしていいか分からないと訴える蕩けかけた藍の色が酷く切なげで、リックは脳まで侵食されるような気持ちになる。


ちゅっとまたリップ音をさせて名残惜しげに唇が離れたら、銀の糸が引いて途中でプツリと切れた。

その上飲み込みきれなかった透明な滴が、レティの口からとろりと溢れ出る。


ぼーっとした顔、潤みを帯びたラピスラズリ、赤く染まった頬、濡れた唇に覗く舌、浅い呼吸。

幼い無垢な普段からは想像もつかないような酷く男の本能を掻き乱されるオーラを放っていることも、レティは全然気づかない。


「レティ……。怖かったら止めてくれ」


レティの口元を汚した液体を手のひらでグイグイと拭き取る。


「リ……ク様?」


自分の掠れた声に反応して小さく呼び返してくれる声さえも、糖度が半端ない。

可愛らしすぎる姿に笑みが漏れる。手から指を離し、耳朶や小さな穴をつつくように触れたら擽ったいのかレティが笑った。

同時に耳から手を離してフッと息をかけてみる。


「ふやぁっ!?」


予想通りにレティは肩をすくませて。リックは意地悪く笑い、今度は鎖骨を擽る。


「も、やだ。リック様ぁ……」


阻止するように手を握ってきたので手を滑らせてまた指を絡め、頭の上に持っていく。

白い腕の裏側がさらされたので、そこに軽く唇をつけた。レティは心地いいのか目を閉じている。




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